高額な薬物療法

高額な薬物療法 どう考える

手術と抗がん剤、放射線治療に続く4番目の有力ながん治療法として注目されているのが、オプジーボに代表される「免疫チェックポイント阻害薬」だ。
 
免疫細胞は常に体の中を監視し、細菌、ウイルスなどのほか、がん細胞も異物として排除する。
しかし免疫の働きが強くなりすぎるとアレルギーや関節リウマチといった自己免疫疾患などが発生してしまう。
免疫力を自ら抑制する仕組みが備わっており、これは「免疫チェックポイント機構」と呼ばれる。
 
がん細胞は正常な細胞から「進化」する際、色々な能力を身につける。
その一つが免疫から逃れる「免疫逃避」だ。
がん細胞はPD―L1という物質を作り、免疫細胞にできる物質(PD―1)と結合させ、免疫細胞の攻撃にブレーキをかける。
 
オプジーボはPD―1と結合しPD―L1でかけられたブレーキを解除し、免疫細胞の攻撃を再開させる。免疫チェックポイント阻害薬にはオプジーボと同様にPD―1に結合するキイトルーダのほか、PD―L1に結びつく薬剤も開発が進んでいる。
 
免疫チェックポイント阻害薬は従来の免疫力を高めるタイプの治療法と違い、はっきりとした効果があり、オプジーボ、キイトルーダは保険薬として認められている。
特に一定の患者では長く効果が維持され、全身の転移が消えたまま3年以上元気で暮らせるケースも珍しくない。
かつての「転移→余命告知」は過去のものとなりつつあると言える。
 
しかし、免疫力の調整機能に強引にブレーキをかけるわけだから、免疫細胞が正常な臓器をも攻撃しやすくなり、副作用も起こりやすくなる。
また、費用も非常に高く、オプジーボは当初の半額以下まで値下げされたが、それでも年額1300万円以上の医療費がかかる。
ただ、進行した肺がんや胃がんなどは健康保険が使えるから、個人の負担額は限られる。
 
オプジーボの2016年の売り上げは1千億円超だったが、これは放射線治療全体の医療費とほぼ同額だ。
今後も次々と開発されるがんの超高額な薬物療法をどう考えていくかは、国民皆保険制度を維持する上で非常に重要だ。

執筆
東京大学病院准教授・中川恵一先生

参考・一部引用
日経新聞・夕刊 2018.8.1

めまいや頭痛、香りが原因?

めまいや頭痛、香りが原因?

柔軟剤など苦手な人も 化学物質の過敏症 こまめな換気で予防、使い方に配慮
室内や車内で気になるのは衣類の柔軟剤や消臭剤などの香りだ。
これらに含まれるごく微量の化学物質の影響で、体調を崩す人がいる。
原因を知り、症状の緩和や発症の予防を心がけよう。
 
現代社会は人工の香りであふれている。
多くは体臭や衣類の生乾き臭などを和らげるためのものだが、身の回りの香りに反応して不調を訴える人がいる。
 
実態を明らかにするため、NPO法人日本消費者連盟(東京・新宿)は2017年7月と8月、「香害110番」を実施。
2日間で213件の訴えが寄せられた。
多かったのは「隣家の洗濯物の香りで息苦しくなる」など柔軟剤関連だった。
「駅で制汗剤を使う人がいて、めまいがした」など多様な原因や症状が挙がった。
 
訴えを寄せた人の約半数が、医療機関で「化学物質過敏症」と診断されていることも分かった。
一般の人にはほとんど問題のない微量の化学物質を浴びて、体調不良を繰り返す病気だ。

56年前に初めて報告されたが、発症の仕組みなどが不明で、当初は病気の存在に否定的な研究者も多かった。
研究が進んで、微量物質の毒性やアレルギー、嗅覚過敏が関与した脳の機能異常などが患者に起きていると解明された。
 
2015年の大規模疫学調査で、人口の7.5%が化学物質に対して何らかの過敏症状を持つという結果も出ている。
決して珍しい病気とはいえない。
 
化学物質を長期間摂取すると、体に加わるストレスの総量が患者の適応能力を超えてしまい、極めて微量かつ多様な化学物質に接触しただけで症状が出るようになる。
 
診断の際は、周囲にある化学物質や、症状が出る場面などを問診票に沿って聞き取る。
さらに国の研究班が作成した自律神経機能や脳神経機能、平衡機能の検査や血液検査などで調べる。
 
化学物質過敏症に有効な治療薬は少なく、治療の中心は生活改善だ。
まずは原因の化学物質をできるだけ浴びないこと。
我慢できないと感じたときは、早めにその場所や発生源から遠ざかろう。
 
こまめな換気も重要だ。
外気を恐れて部屋の窓を閉めきる人が多いが、化学物質は屋外より室内に多い。
窓を開けたり、換気扇を使ったりして部屋を換気したい。
空気清浄機は主に粒子状物質を取り除くため、すべての化学物質を除去するわけではない。
 
自律神経の機能を高めるためにお薦めなのが運動。
軽く汗ばむ程度のウオーキングなどを定期的に取り入れよう。
副交感神経を優位にしてリラックスできるように、ぬるめの湯にゆっくりつかるのもいい。
 
食事ではビタミンやミネラルを十分に取りたい。
特に重要なのはマグネシウム。
患者の17.5%にマグネシウム欠乏が見られる。
マグネシウムはソバなどの穀類、落花生やアーモンド、海藻類に豊富に含まれており、神経や筋肉の過剰な緊張を和らげる効果が期待できる。
こうした生活改善によって患者の7割で症状が改善する。
 
原因物質を過剰にまき散らさないために、患者でない人も洗剤や柔軟剤などの適正な使用量を守ることが重要だ。
多くの人が集まる場所では特に、自分は快適でも他人が不快に感じる可能性を念頭に、香りの使い方に配慮したい。
現代は誰もが化学物質過敏症を発症する可能性がある。
化学物質との正しいつきあい方を模索するようにしたい。

まとめ
化学物質過敏症とは・・・
原因
嗅覚過敏
微量物質の毒性
アレルギー

症状
目まい
頭が重い
目や鼻の粘膜がチクチクする
湿疹、じんましん
耳鳴り
息苦しい
不安・不眠、うつ状態

症状はこうやって和らげる
部屋を換気する
消毒剤や柔軟剤、殺虫剤、芳香剤などの使用量を守る
トイレの環境を改善
発生源から遠ざける
海藻類や豆を食べてミネラルを摂る
軽い運動をする


参考・一部引用
日経新聞・朝刊 2017.12.16

めまいや頭痛、香りが原因?

めまいや頭痛、香りが原因?

柔軟剤など苦手な人も 化学物質の過敏症 こまめな換気で予防、使い方に配慮
室内や車内で気になるのは衣類の柔軟剤や消臭剤などの香りだ。
これらに含まれるごく微量の化学物質の影響で、体調を崩す人がいる。
原因を知り、症状の緩和や発症の予防を心がけよう。
 
現代社会は人工の香りであふれている。
多くは体臭や衣類の生乾き臭などを和らげるためのものだが、身の回りの香りに反応して不調を訴える人がいる。
 
実態を明らかにするため、NPO法人日本消費者連盟(東京・新宿)は2017年7月と8月、「香害110番」を実施。
2日間で213件の訴えが寄せられた。
多かったのは「隣家の洗濯物の香りで息苦しくなる」など柔軟剤関連だった。
「駅で制汗剤を使う人がいて、めまいがした」など多様な原因や症状が挙がった。
 
訴えを寄せた人の約半数が、医療機関で「化学物質過敏症」と診断されていることも分かった。
一般の人にはほとんど問題のない微量の化学物質を浴びて、体調不良を繰り返す病気だ。

56年前に初めて報告されたが、発症の仕組みなどが不明で、当初は病気の存在に否定的な研究者も多かった。
研究が進んで、微量物質の毒性やアレルギー、嗅覚過敏が関与した脳の機能異常などが患者に起きていると解明された。
 
2015年の大規模疫学調査で、人口の7.5%が化学物質に対して何らかの過敏症状を持つという結果も出ている。
決して珍しい病気とはいえない。
 
化学物質を長期間摂取すると、体に加わるストレスの総量が患者の適応能力を超えてしまい、極めて微量かつ多様な化学物質に接触しただけで症状が出るようになる。
 
診断の際は、周囲にある化学物質や、症状が出る場面などを問診票に沿って聞き取る。
さらに国の研究班が作成した自律神経機能や脳神経機能、平衡機能の検査や血液検査などで調べる。
 
化学物質過敏症に有効な治療薬は少なく、治療の中心は生活改善だ。
まずは原因の化学物質をできるだけ浴びないこと。
我慢できないと感じたときは、早めにその場所や発生源から遠ざかろう。
 
こまめな換気も重要だ。
外気を恐れて部屋の窓を閉めきる人が多いが、化学物質は屋外より室内に多い。
窓を開けたり、換気扇を使ったりして部屋を換気したい。
空気清浄機は主に粒子状物質を取り除くため、すべての化学物質を除去するわけではない。
 
自律神経の機能を高めるためにお薦めなのが運動。
軽く汗ばむ程度のウオーキングなどを定期的に取り入れよう。
副交感神経を優位にしてリラックスできるように、ぬるめの湯にゆっくりつかるのもいい。
 
食事ではビタミンやミネラルを十分に取りたい。
特に重要なのはマグネシウム。
患者の17.5%にマグネシウム欠乏が見られる。
マグネシウムはソバなどの穀類、落花生やアーモンド、海藻類に豊富に含まれており、神経や筋肉の過剰な緊張を和らげる効果が期待できる。
こうした生活改善によって患者の7割で症状が改善する。
 
原因物質を過剰にまき散らさないために、患者でない人も洗剤や柔軟剤などの適正な使用量を守ることが重要だ。
多くの人が集まる場所では特に、自分は快適でも他人が不快に感じる可能性を念頭に、香りの使い方に配慮したい。
現代は誰もが化学物質過敏症を発症する可能性がある。
化学物質との正しいつきあい方を模索するようにしたい。

まとめ
化学物質過敏症とは・・・
原因
嗅覚過敏
微量物質の毒性
アレルギー

症状
目まい
頭が重い
目や鼻の粘膜がチクチクする
湿疹、じんましん
耳鳴り
息苦しい
不安・不眠、うつ状態

症状はこうやって和らげる
部屋を換気する
消毒剤や柔軟剤、殺虫剤、芳香剤などの使用量を守る
トイレの環境を改善
発生源から遠ざける
海藻類や豆を食べてミネラルを摂る
軽い運動をする


参考・一部引用
日経新聞・朝刊 2017.12.16

アトピー、薬塗り続ける新治療

アトピー、薬塗り続ける新治療 「見えない炎症」抑える

アトピー性皮膚炎の新たな治療法が定着しつつある。
ステロイド剤など抗炎症薬で湿疹を抑えた後も薬を使い続け、「見えない炎症」を抑えるもので、学会が昨年(2016年)、強く推奨した。
抗炎症薬で症状が改善しない患者向けの新薬の開発も進み、期待が集まっている。
 
乳児期からアトピー性皮膚炎に悩まされていた東京都葛飾区のRちゃん(4歳、女児)は2014年12月、全身の湿疹がひどくなり、かかりつけ医の紹介で同区の大学病院を受診した。
 
アトピーの治療では、抗炎症薬で湿疹をおさえる。
湿疹が治ると薬を塗るのをやめ、再発した時に再び使うのが一般的だった。
 
子どもの薄い皮膚にステロイドを塗ることに抵抗があるという母親(33)に主治医は「今しっかり塗ってスキンケアを丁寧に続ければ、塗る量を減らしていける」と説明。
納得した母は1日3回、入浴後の娘の全身にステロイドと保湿剤を混ぜたクリームを塗った。
母は「最初は1回で2時間ぐらいかかったが必要だと認識できたので続けられた」と語る。
 
1カ月後には見た目の湿疹はほぼ治まり、皮膚はきれいになった。
だが症状が出ていない時にも薬を使う「プロアクティブ療法」を実践し、1日、2日おきと間隔を空けて薬を使い続けた。
見た目はきれいでも皮膚の下に炎症が残っていると、再び湿疹が出やすいために薬を使い続けるものだ。
 
主治医は「炭火をおこした後、くすぶる炭に風を送れば再び燃え上がるようなイメージ」と説明する。
「見えない炎症」を抑え、湿疹の再発を予防するもので、この主治医は「薬の回数を減らし、保湿剤だけでのケアに軟着陸させるための治療法」と説明する。
Rちゃんは一昨年末には夜だけ週2回、昨春には週1回と塗る回数が減った。
今は見た目でアトピーとわからないほどきれいな状態だ。
母は「このまま保湿剤のみのスキンケアになれば」と話している。
 
日本皮膚科学会は昨年、7年ぶりに診療指針を改訂。
この治療法について、有用で安全性が高いとして初めて強く推奨した。
湿疹が活動性になる前に予防的に塗る方が、長期的には抗炎症剤を塗る量も減り、安全性が高い。
  
「見えない炎症」の程度を測るのに使われるのが、「TARC」と呼ばれる血液検査だ。
炎症を悪化させる血中の物質を測定し、炎症がひどいほど高い値になる。
値を知ることで、薬を塗ろうという患者さんの動機付けや、薬を減らすタイミングの目安に利用できる。

新たに注射薬の開発も  
抗炎症薬の治療で皮膚の状態が改善しにくい患者に対し、効果が期待される新薬の開発も進む。
 
米国で今年(2017年)3月に承認された「デュピルマブ」は、国内では承認を申請中。抗炎症薬の効果がみられない大人向けの注射薬で、炎症に関与するたんぱく質のIL(インターロイキン)4とIL13の働きをピンポイントで妨げる作用がある。
 
国際共同治験では、この注射を週1回か隔週で受けた患者の約4割は、16週間後に湿疹が「消える」「ほぼ消える」効果が見られた。
海外では12~18歳の患者への治験を実施中。
画期的な薬で副作用の結膜炎などに注意すれば安全性は高い。
 
かゆみに関与するとされるIL31の働きを妨げる日本発の「ネモリズマブ」は国際治中。注射を月1回受けた中等症以上の患者のかゆみが3ヵ月後に6割ほど軽減し、湿疹も4割程度改善したという。

参考・一部引用
朝日新聞・朝刊 2018.7.19


<関連サイト>
日本皮膚科学会ガイドライン・アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2016 年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/atopicdermatitis_guideline.pdf
プロアクティブ療法
プロアクティブ(proactive)療法は,再燃をよく繰 り返す皮疹に対して,急性期の治療によって寛解導入した後に、保湿外用薬によるスキンケアに加え、ステ ロイド外用薬やタクロリムス外用薬を定期的に(週 2 回など)塗布し,寛解状態を維持する治療法。
それに対 し、炎症が再燃した時に再度抗炎症外用薬を使って炎症をコントロールする方法をリアクティブ(reactive) 療法という。
アトピー性皮膚炎では炎症が軽快して一見正常に見える皮膚も、組織学的には炎症細胞が残存しており、再び炎症を引き起こしやすい状態にある。
そして、そのような場合には TARC などの病勢を反映するマーカーは正常値まで下がっていないことが多い。
この潜在的な炎症が残っている期間は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬を継続するかプロアクティブ療法を行うことによって、炎症の再燃を予防することが可能になることが多。
ただし、抗炎症外用薬の連日塗布からプロアクティブ療法への移行は、皮膚炎が十分に改善した状態で行われることが重要で,必要塗布範囲,連日塗布から間欠塗布 への移行時期,終了時期等については個々の症例に応 じた対応が必要である。
なお、プロアクティブ療法を行っている間も保湿外用薬などによる毎日のスキンケアは継続することが勧められる。

Th2ケモカイン(TARC): thymus and activation-regulated chemokine
https://www.okayama-u.ac.jp/user/hos/kensa/protein/tarc.htm
特定の白血球を遊走させるケモカイン群(白血球走化性因子)の一つで、71個のアミノ酸より構成されるタンパク質。
アトピー性皮膚炎では、様々な刺激によって表皮角化細胞等から、TARC産生が誘導または増強されることが知られている。
このTARCがTh2細胞を病変局所に引き寄せてアレルギー反応を亢進させることで、アトピー性皮膚炎の病態形成に関与し、症状を増悪させると考えられている。
血清中のTARC値は、アトピー性皮膚炎の重症度を反映して推移することが確認されており、アトピー性皮膚炎の重症度評価の1つとして、臨床的に利用されている。



基準値: 
小児(6~12ヶ月) 1367 pg/mL未満
小児(1~2歳)   998 pg/mL 未満
小児(2歳以上)  743 pg/mL未満
成人     450 pg/mL未満 


TARCとアトピー鑑別試験の違いは何ですか?
http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/175.html

プロアクティブ療法の課題と TARC測定の意義
http://www.takeda.or.jp/1_index/1_shinryouka_detail/img/hifuka_161116.pdf

ストレス蓄積 早めに自覚

ストレス蓄積 早めに自覚

仕事・家事 滞るのは要注意
職場や家庭で感じる、様々なストレス。
よくあることだと放置すると、精神疾患や急病の引き金になることもある。
ストレスとの適切な向き合い方を知って、早めに対処し、気持ちを楽にして過ごそう。

過度なストレスを我慢するうちに、倦怠感や落ち込みといった不調が現れる。
ストレス蓄積の兆しはイライラや不安感などメンタル面にも出る。 

身体と行動に表れる、具体的な異変に注目したい。
 
例えば不眠や食欲減退といった、不快なストレス反応。
単なる疲れと侮って放置すると、病気を招く。
行動面では、仕事や家事を普段どおりにこなせなくなっていたら危険だ。

女性、多く感じがち•抵抗期の「元気」続かず
女性は特に、ストレスを抱えることが多い。
結婚や出産などライフステージの変化や、社会的性差によるストレスを男性よりも受けやすいためだ。
月経や更年期など、ホルモンが原因の場合もある。
 
不快なストレスの要因が重なると、一時的に心身の抵抗力が下がり、活動が滞りがちになる。
体がストレスに対抗するため、いったん元気になるものの、無理は続かず、疲れ果ててうつ病などを招く。
専門家は「まずい状態に近づいていることに早めに気付いて、歯止めをかけてほしい」
と口をそろえる。

人は強いストレスを受けることで現実を見るフィルター(認知)がゆがみ、マイナス
思考や自分を追い込む考え方に陥りがちだ。
悩みの原因ばかり追究するのではなく、どうすれば次に進めるのかをまず考えたい。
 
認知行動療法では、自分の行動や考え方を見つめ直す。
物事の受け取り方のゆがみを修正して、気持ちを楽にしたり、行動を変えたりする治療
法だ。
心の健康には、認知(コグニション)とコントロール感覚、コミュニケーションを表す英単語の頭文字を取った「3つのC」が重要だ。
 
健全な認知を支えるのが、睡眠と気分転換だ。
睡眠は1日6時間が目安。
眠れなくても、横になるだけで一定の効果が期待できる。
気分転換は好みの方法を選ぼう。
映画や読書、ストレッチのほか、家でグラブラするだけでもよい。
ただし、飲酒は要注意。
依存症につながるおそれかある。
 
仕事や家事などを自分の裁量で進めているという実感(コントロール感覚)を持つことも大切だ。
視野が広がって考え方や行動が柔軟になり、心の状態が変わる。
身近な人に悩みを話すだけでも、ストレスはかなり軽くなる。
家族や職場の同僚がストレスの元になっていることがある。
行き付けの美容師など聞き上手な接客のプロに話すのも一案だ。
  
一つ一つは難しくないが、実行に移さない人は多い。
体力がある人や責任感が強い人ほど「まだ大丈夫」と自分を過信しがちだ。
たまったストレスを放置すると、どんどん心身がむしばまれる。
  
自力で解決するのが難しいと感じたら、職場のカウンセリング室や医療機関で相談し
よう。
大切なのが、専門家との相性。
最初に相談した医師やカウンセラーとの相性が良くないときは、簡単に変えない方がよいが、他の人に相談する方法もある。
  
生きている限り、ストレスはつきまとう。
適度なストレスは集中力を増す効果もあり、ストレスそのものは決して悪者ではない。
 
自分1人で抱え込まずに、日常生活で工夫しながらストレスの状態を適切に保とう。

参考・引用
日経新聞・朝刊 2018.7.28


<私的コメント>
この記事を読まれて「なるほど」と思われた方もいれば、一方で「では具体的にどうすればいいのか」「これができれば苦労しない」という感想を持たれた方もみえるのではないでしょうか。
私自身は循環器内科が専門ですが、勝負の早い病気を日頃診ていると「精神科医」にならなくてよかったと思ってしまいます。


<関連サイト>
自分では自覚していない「隠れストレス」の見つけ方
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/17/013000009/100300016/?P=2

その疲れは「休め」のサイン 慢性疲労に陥るメカニズム
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO98757850T20C16A3000000?channel=DF130120166093

がん 行動次第で「運命」変えられる

= 行動次第で「運命」変えられる -
「がんには放置してよいものと、最初から転移があって治らないものがあり、どちらかは運命的に決まっている」という考えの人がいる。
こうした「がん運命論」は、がんになることも、がんで死ぬことも自分の努力では変えることはできないといった一種の諦観と言えるだろう。

しかし、がんの原因のうち遺伝は5%にすぎないから、がんは「運命」ではない。
生活習慣の改善で発症リスクを半分程度まで下げられるし、がん検診によって早期に発見できれば95%が治る。
がんは自らの行動でリスクをコントロールできる病気といえる。
 
日常の問題に対する対処の仕方と、がん発症やがん死亡との関連を調べた大規模調査の結果でも、このことが実証された。
研究では、がんに罹患したことがない全国の50~79歳の日本人約5万5千人に自記式のアンケートを行い、「日常の問題や出来事に対する対処の仕方」を尋ねた。
約10年の追跡期間中に5241人にがんが発症し、1632人のがん死亡が確認された。
 
対処の仕方を「計画を立てて実行する」「誰かに相談する」といった「対処型」と、「自分を責める」「避けてほかのことをする」といった「逃避型」に大別して、回答とがん発症、がん死亡との関連が検討された。
 
その結果、対処型の行動をとる人は有意にがん死亡が少なかったことが分かった。
対処型行動をとる人では、早期のがんが有意に多く、検診でがんが発見されたケースが多かったことも確認された。
対処型の行動をとる人は、逃避型の人に比べて、検診を積極的に受けることでがんを早期に発見でき、結果的にはがん死亡のリスクを減らすことができたと考えられる。
 
がんは、少しの知識とそれによる行動の変容で運命を変えることができる病気だ。
まずはがんを知ることが非常に大切だが、積極的に行動することも必要だ。
 
2007年に閣議決定された国の「がん対策推進基本計画」では「がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会」を目指すとしている。

執筆 東京大学病院・中川恵一 准教授
参考・一部引用
日経新聞・夕刊 2018.7.11

運動後のビール 要注意

運動後のビール 要注意

夏になると、痛風の発作が起こりやすい。
汗をかいて脱水が進むことに加え、ビールを飲む機会が増えて尿酸値が上がるためだ。
発作を防ぎ、安心してお酒を楽しむための注意点は・・・。

引き金だらけ・・・夏の痛風 1日2リットルの水分、脱水防ぐ / 乳製品で尿酸排出
突然、足の指が腫れ上がり、まともに歩けないほどの激痛が走る・・・。
ビールがおいしい季節、お酒を飲む習慣のある人が恐れるのが痛風だ。
原因は関節にたまった尿酸の結晶。
これがはがれることで炎症が起きる。
 
痛風患者はどんどん増え、若年化も進んでいる。
かつては50代以降に発症する人が多かったが、最近は30代後半がピークになっている。国民生活基礎調査によると、痛風患者数は右肩上がりに増加し、2013年には100万人を突破。
30年前の4倍に達した。
 
尿酸は体内でも作られるほか、食品に含まれるプリン体が分解される過程でもでき
る。
血液中の尿酸値が100ミリリットル当たり7.0ミリグラムを超えると高尿酸血症。
尿酸が結晶化して関節にたまるようになり、痛風発作を起こす可能性が高くなる。
 
尿酸値が9~10ミリグラムを超えていながら発作が起こらない人もいるが、油断は禁物。尿酸値が7ミリグラムを超える状態が長く続けば、それだけ発作を起こす確率が高くなる。
 
足の指や足首に発作が起きるのは、体温が低いので結晶がたまりやすく、歩くときの
振動ではがれやすいため。
女性ホルモンには尿酸値を下げる作用があることから、痛風患者の95%は男性だ。
医療機関を受診すると、尿酸の合成を抑える薬や排出を促す薬を処方される。
 
尿酸値が上がらないように、プリン体が多いビールの替わりに、プリン体ゼロの発泡酒や焼酎を飲めば安心、とは言えない。
アルコール自体に尿酸値を上げる作用があり、酒量が多いほど痛風の発症率は高くなる。
尿酸値を上げない1日の目安量はビールで中瓶1本(500ミリリットル)、日本酒なら1合(180ミリリットル)程度という。
 
プリン体が多いレバーや白子をなるべく食べないという人も多いが、プリン体はすべ
ての食品に入っている。
含有量が多い食品を控えるよりも、食べる全体量を減らすのが大切だ。
尿酸の排出を促し、尿酸値を下げる作用があるたんぱく質、カゼインを合む牛乳やチーズなど乳製品は取りたい食品だ。
 
食事や酒のほかにも尿酸値を上げる要因はある。
代表的なのが脱水。
発汗量が増える夏は特に注意が必要だ。
尿酸は尿として体外に排出される。
水をたくさん飲んで、脱水を防ぎ、尿酸の排出を促そう。
ノーカロリーの水かお茶を1日2リットル飲むとよい。
 
ストレスはそれ自体よりも、その対処法次第で尿酸値が上がりやすい。
暴飲暴食など肉体に負担をかける方法ではなく、健康的にストレスを解消できる趣味を持つとよい。
 
運動するなら、ウォーキングや水泳といった有酸素運動は尿酸値を下げるのでオススメだ。
筋力トレーニングなどの激しい無酸素運動は、尿酸値を上げる作用があるので注意しよう。
 
暑さで汗の量が増える夏、スポーツやサウナで大量に汗をかいた後にビールを飲むと、一気に尿酸値が上がる。
 
尿酸値が高い人は大量に飲酒したはずみに発作を起こしやすい。
汗をかいたらビールの前にいったん水分を補給。
飲み過ぎに注意して、節度ある酒を楽しもう。

まとめ
こんな兆しがあれば痛風に注意
・尿酸値が7.0(mg/dl)以上  
・家族に痛風患者がいる
・尿路結石と診断されたことがある
・20歳の時より体重が10キログラム以上増えた
・中性脂肪が高いと指摘された
・アルコール飲料をよく飲む

生活習慣への心がけが予防に役立つ
・食べる量やアルコールの摂取を控える
・水分を1日2リットル取る
・ウォーキングなどでストレスを解消
(筋トレなど無酸素運動は尿酸値を上げるので注意)

特徴
・尿酸が体内にたくさんたまると起きやすい
・患者の95パーセント以上は男性
・足の指や足首など関節に激痛

参考・一部引用
日経新聞・朝刊 2018.7.14

糖質抑えて体重減らす

ご飯やパンの主成分 糖質抑えて体重減らす

期間・献立 意見分かれる
血糖値を高める糖質の摂取を減らして糖尿病の予防や減量に役立てる「糖質制限食」を取り入れる機運が広がり始めた。
特殊な食事療法ととらえられがちだが、専門家の間でも適切に利用すれば効果があると支持する見方が増えている。「減量が必要な人を対象に短期間なら」と、導入する際の条件も徐々に浮かび上がってきた。


うまく使えば現在のカロリー制限食と同じ効果がある。

糖質制限食は大きく2種類ある。
米国のアトキンス医師が考案したダイエット法に基づく厳しいやり方と、糖尿病患者でもある米国のバーンスタイン医師が提唱した食事療法だ。
炭水化物の食べる量を減らせばよく、食材のカロリー量を計算する面倒がない。
 
アトキンス医師は通常なら200~300グラムの炭水化物の摂取量を「1日20~40グラム」に、バーンスタイン医師は「同130グラム以下」を唱えた。
糖質は炭水化物から食物繊維を除いた主成分に当たり、摂取制限量はほぼ同じとみてよい。
医療機関や栄養士らで容認する声が増えているのは、バーンスタイン式の「緩やかな糖質制限食」の方だ。

私的コメント
「糖質制限食」という話題が出た時に、日本糖尿病学会は、(学会が推奨する)従来の食品交換表に基づく食事摂取方法がベストであり「糖質制限食」に対して否定的でした。
学会での議論も「厳しい糖質制限食は必要か」という形のものでした。
当時から誰しもが「緩い糖質制限食」ならいいんじゃないかと心の中では思ったものです。
「厳しい」という言葉が恣意的に使われていらのです。
最近では「緩やかな糖質制限食」が容認されつつあるようですが当たり前といえば当たり前です。
なんでも「過ぎたるは・・・」です。

糖質制限食を取り入れた患者で(血糖値調整ホルモンの)インスリンの効きを悪くする内臓脂肪が減少する。
この結果、血糖値を管理しやすくなり、大きな利点となる。
 
配慮しなければいけない点もいくつかある。
診療の経験や論文情報などから利用者の肥満度、実施期間、糖質に代わり比率が高まるたんぱく質と脂質の食材の選択を主な注意点に掲げる。
 
【肥満の人が実施するのが望ましい】
糖質は筋肉に蓄えられ運動時のエネルギーや飢餓になったときの備えになる。
体内で糖質が不足すると筋肉などのたんぱく質を分解して糖を合成する反応が自然に起きる。
このため一般にやせた人に糖質制限食は適さない。
よく運動する人や力仕事の多い職種の人にも向かない。
 
日本では体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)が25以上の人を肥満としている。
糖質制限食を利用できる人をBMI25以上と決めている医療機関もある。
 
【継続期間はおおむね半年間】
糖質制限食はカロリー制限食に比べ献立が楽で長続きしやすい。
しかしごはんや麺、パンの量が少なく、主食をたっぷり取り慣れた人には物足りなさが残る。
長く続けられないと、不満を訴える人もいる。
また1年ほど継続すると体重減少の効果がみられなくなり、悪玉コレステロール値が高まり動脈硬化の危険が増すとの調査があり、長期間の利用には消極的だ。
 
一方、糖質制限で減量し脂質や血糖値の改善が6年間維持された報告もある。
「1年以内」と糖質制限食に条件をつけて容認していた米糖尿病学会が期限を撤廃した動きなども踏まえ「長期の利用にも全く問題はない」と反論する専門医のいる。
 
国内に決め手となるデータはない。
今のところ半年なら問題なく受け入れ可能といえそうだ。
 
【たんぱく質と脂質の食材の選び方も考慮】
糖質を減らす分だけ必要なエネルギーをたんぱく質と脂質に求めなければいけない。
動物性のたんぱく質を取る人ほど死亡率が高くなる報告がある。
糖質制限食を取り入れる場合は脂質やたんぱく質を動物性か植物性にするかがより重要になり、大豆や魚などの食材を選ぶようにした方がいい。
 
食事と健康に関する調査は常に不確定さがつきまとう
信頼性の高い結果を得ることが難しいからだ。
野菜を先に食べた後に糖質を取れば吸収を抑えられるとの調査があるし、いつ食事をするのが望ましいかを探る「時間栄養学」という研究からは、夜間に糖質を摂取すると脂肪に蓄積されやすいという結果が出ている。

糖質やカロリーとともに、味わい楽しむ食事を大切にする視点も忘れないようにしたい。

<関連サイト>
糖質制限食の内容や効果に対する質問に専門家が回答
日本生活習慣病予防協会の「食事指導に関するQ&A」
http://www.seikatsusyukanbyo.com/monthly/2013/seminar/qanda.php

参考・一部引用
日経新聞・朝刊 2014.9.7

画像診断 相次ぐ「見落とし」防ぐには

相次ぐ「見落とし」防ぐには

がんのコンピューター断層撮影装置(CT)検査に関連する医療ミスが続出している。
6月だけでも、千葉大学病院、兵庫県立がんセンター、横浜市立大学の2病院の計4カ所で発覚した。
 
胸部レントゲン撮影などの基本的な画像検査は各科の主治医が自分で読影することがほとんどだが、CTや磁気共鳴画像装置(MRI)などの高度な検査では画像診断の専門医(放射線診断医)が読影を行い、報告書を作成する。
今回のミスの多くが、報告書の記載を主治医が見落としたことによるものだった。
 
千葉大病院の場合、がん患者9人で見落としがあったが、そのうち死亡した2人について、同病院は「最初の検査後に治療していれば、死亡しなかった可能性がある」と認めている。
 
亡くなった2人のうち60代の女性は2013年6月、腸の病気の経過観察のためCT検査を受けた。
放射線診断医は報告書で腎臓がんの可能性を指摘したが、主治医は十分に確認しなかった。
昨年10月に進行した腎臓がんが見つかったが手遅れで、同12月に死亡した。
70代男性は16年1月のCT検査で肺がんが指摘されたが、担当医は報告書を見落とし、17年4月に肺がんと診断されて同6月に死亡している。
 
患者9人のうち、死亡した2人を含む5人では、報告書の記載が見落とされていた。
また、2人については担当医が放射線診断医に読影を依頼していなかった。
そのほか、報告書の作成が遅れたり、報告書が作成されていなかったりしたケースが1例ずつあった。
 
日本医療機能評価機構によると、15年1月~17年9月に見落としなど画像診断報告書の確認不足が32件あったというから、今回の件も氷山の一角といえるだろう。
 
見落としを防ぐためには、血液検査と同様に、患者が画像診断報告書を受け取ることが大事だと思う。
報告書は日本語で書かれることがほとんどだが、分からない点は主治医に確認するとよい。
画像診断に限らず、患者が自分のデータを医療者と共有することが医療ミスの減少につながる。
医療データはすべて患者のものだら、遠慮など無用だ。

執筆
東京大学病院・中川恵一 准教授

参考・一部引用
日経新聞・夕刊 2018.7.18


<私的コメント>
「担当医が放射線診断医に読影を依頼していなかった」・・・千葉大のこのケースはかなり問題があります。
大学病院を含め大病院には放射線科診断医がいます。
当院は一定の大病院にCTやMRIの画像診断を依頼して専門医のレポートをFAX、郵送の両方でいただいています。
そして必ずご本人にコピーを手渡ししています。
もちろん画像データが入った CDROMも。
意外と大病院ではデータを患者さんに渡さないことも多いようです。
たったこれだけでミスが防げるのです。

そして一番の問題は電子カルテではないでしょうか。
私は今でも紙カルテにこだわっています。
返書はペタペタとカルテに貼り付けています。
電子辞書と辞書とどちらが便利か。
ちょっと想像しただけで明らかです。

最後に一言。
この記事を読んで思い出したことがあります。
それは甲状腺のMRIを依頼して放射線科専門医に、肺尖部の肺がんを指摘していただいたことがあるのです。
よく無床診療所でCTやMRIを導入されている先生がおみえになります。
機器自体もすぐに最先端というわけではなくなり、性能も十分ではないはずです。
何よりも読影力がどれだけかが問題となります。
当院では資金力がないのはもちろんですが、そういった考え方で大病院に検査依頼をして複数の医師(放射線科専門医と私)との二重読影を心がけています。

介護施設で「快眠」リハビリ

介護施設で「快眠」リハビリ

不眠は認知症・生活習慣病のもと 光で体内時計調整/自宅で睡眠測定も
高齢者の睡眠を改善する取り組みが医療機関以外でも広がってきた。
体内時計の正常化を図る「光療法」を導入する介護施設が登場し、自宅で睡眠状態を測定する装置の貸し出しも神奈川県で本格的に始まる。
不眠は生活習慣病や認知症のリスクを高めるとされ、悩む人は増えている。専門家は適度な運動や栄養バランスの取れた食事が快眠につながると指摘する。

6月下旬、大阪市の某通所介護施設。
トレーニングやウオーキング用のマシンが並ぶフロアの中央で、強い光を発する機器の前に座り、読書をしたり足裏のマッサージを受けたりする高齢者の姿がみられた。
睡眠改善のため、2015年の開業時から利用者全員に続けている光療法だ。
 
人は朝日を浴びると体内時計が整い、睡眠を誘導するホルモン「メラトニン」が夜に分泌されて眠気を促す。
身体機能が低下した高齢者は外出が減って日光を浴びる機会が少なくなる。光療法は人工的に明るい光を当てて、体内時計を正常化させるのが狙い。
施設の利用者は専用機器で朝に光を浴びるわけではないが、日中でも睡眠に一定の効果が見込めるという。
 
デイサービスの3時間15分のプログラムのうち、最大1万ルクスの光を10分間浴びる。
光療法は医療機関で施されることが多いが、公的医療保険は適用されない。
専用機器があれば施設や自宅でも可能だ。
週2回通うEさん(80歳・女性)は「数年前から睡眠剤を服用しているが、量を半分にしてもぐっすり眠れるようになった」と笑顔を見せる。
 
機能訓練指導員のTさん(49歳・男性)は「体を動かす根幹の脳が休まらないとリハビリ効果は弱まる。短時間だが、睡眠の大切さを知るきっかけにしてほしい」と話す。
 
光療法で使う専用機器の販売会社(神戸市)の担当者は「販売先は医療機関が多いが、最近は介護施設で導入するケースもある」と説明する。
 
16年の厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、睡眠で休養が「あまりとれていない」「まったくとれていない」と答えた人は60歳代で14.6%、70歳以上で11.2%。09年の調査と比べて、それぞれ2.7ポイント、3.6ポイント上回った。
眠っても休めていないと感じる高齢者は増えている。
 
医療法人社団フォルクモア(横浜市)は、医療・介護ベッド最大手のパラマウントベッド(東京)などと協力し、睡眠の簡易検査を始めた。
高齢者にベッドや布団に敷く同社のセンサー装置を貸し出し、自宅で睡眠状態を1週間ほど計測。
寝返りや心拍・呼吸、就寝・覚醒時刻などのデータを記録し、睡眠状態を分析してアドバイスする仕組みだ。
 
17年10月~18年3月、川崎市で試行。
「地域に根付いて高齢者の利用が多く、薬を受け取るついでに睡眠や体調の相談も気軽できる」との理由から、薬局30店舗に装置を預け、高齢者約250人に貸与した。
その結果、一時的に呼吸が止まるなど睡眠時無呼吸症候群の疑いがある高齢者もみられ、受診を促したという。
 
8月から川崎市と横浜市で簡易検査を有料で導入し、薬局以外にドラッグストアにも利用店舗を広げる方針だ。
関係者は「不眠は認知症や生活習慣病につながる恐れがある。自分の睡眠状態を知ることで健康維持に努めることができる」と話している。

日中の活動減りやすく 脳への刺激が重要
人は老いとともに深い眠りが少なくなり、睡眠時間も減るのが自然だ。
体調やストレス、薬の副作用などが眠れない要因となる。
 
睡眠不足が続くと、肩こりや頭痛、倦怠感などが生じ、重症化でうつ病や生活習慣病に至る。
認知症の原因物質の蓄積も判明しており、発症につながる恐れがある。
 
良質な睡眠のために
〃茲泙辰浸屬膨日を浴びる
∋曲發筌献腑ングなど軽い運動
1浜椒丱薀鵐垢里箸譴芯昼夜の食事
などを挙げる。

約20~30分の昼寝も効果があるが、長いと夜に眠れなくなるので注意が必要。
寝る際に手足が冷えない工夫も有効という。
 
高齢者は日中の活動が若い頃に比べて減りやすい。
脳に刺激を与える生活を心がけたい。
好奇心を持って自分のりたいことに毎日取り組むことも、良質な睡眠につながる。


<まとめ>
睡眠不足による影響と快眠のポイント
 睡眠不足が続くと・・・
  ・肩こり
  ・頭痛
  ・倦怠感
 深刻化すると・・・
  ・うつ病
  ・生活習慣病
  ・認知症 
 
 よく眠るためには・・・
  ・朝日を決まった時間に浴びる
  ・散歩やジョギングなど軽い運動
  ・栄養バランスのとれた3食
  ・20~30分ほどに昼寝
  ・寝床で手足を温める


参考・引用
日経新聞・夕刊 2018.7.18