「がん」の10年生存率

がん10年生存率どう見る 5年以降も低下なら長期観察

国立がん研究センターなどの研究グループが19日に公表したがんの「10年生存率」。
がんと診断された全国の患者約3万5千人を10年間追跡して集計した数値だ。どう読み取り、活用できるのだろうか。

がんの10年生存率58・2% 部位で差、浮き彫りに
「やっぱり10年なんだね」。
21日、がん患者らでつくる鹿児島市の「がんサポートかごしま」で開かれたサロン。
4人が集まり、話題は10年生存率で持ちきりだった。
 
参加者の一人で、8年前に乳がんを発症した40代女性は、医師に「5年の経過観察が必要」と言われ、定期的に病院に通った。
しかし、5年経って病院通いをやめた2年後に再発した。
 
公表された乳がんの10年生存率は80・4%。
胃や大腸の生存率は5年以降、ほぼ横ばいだが、乳がんは5年(生存率88・7%)以降も同じ割合で下がり続ける。
乳がん患者の一人、三好綾理事長(40)は「経過観察の年数は病院や医師によって5年、10年と違う。やはり10年のフォローアップが必要と知った」と話す。
 
10年生存率では、がんの進行度合い(ステージ)ごとの生存率も示された。
ステージ1と4を比べると、胃や大腸では90ポイント近く離れており、早期発見・早期治療の重要性がうかがえる。
一方、ステージ1でも肝臓や膵臓では3割を切る。
また、前立腺では、ステージ3まではほぼ100%だが、転移のある4では4割以下。
転移の有無が生存率に大きく影響しているとみられる。
 
研究グループは、2012年から心存率解析システム「KapWeb」(https://kapweb.chiba‐cancer‐registry.org)を公開している。
性別や年齢、受けた手術などを入力すると、自分に近い条件での生存率が出てくる。
今回公表された最新データも反映されている。

1999年に初期の子宮頸がんを発症した、「愛媛がんサポートおれんじの会」の松本陽子理事長(50)は、自分の情報をシステム
に入力してみた。
10年生存率は91.6%と出たという。
松本さんは「入力の仕方がわからない人もいる。
各地のがん相談支援センターなどで対応することも必要では」と指摘する。

新薬登場さらに改善
今回のデータは、99~02年に診断された患者を分析した。
国立がん研究センターでは「あくまで十数年前のデータとして参考にしてほしい」と話す。

当時は抗がん剤や放射線治療を併用する治療がようやく確立してきたころだ。
今はがん検診を中心に早期の発見・診断が進み、新薬も登場した。
実際に5年生存率を診断された年ごとにみると、99年と最新の07年では全部位で63%から68.9%と5.9回%改善した。

08年ごろから、新しい抗がん剤や分子標的薬が出てきて、現在はもっと改善された数値になるとみられる。
特に肺がんや大腸がんで期待できる。
不安があれば、主治医に相談したい。
 
10年生存率が15.3%と低かった肝臓がんの場合、C型肝炎やB型肝炎のウイルス感染が原因になることが多い。
現在はウイルスを排除したり抑え込んだりする薬があり、検査を早く受ければ、がんの発症を抑えやすくなってきた。

副作用が少なく高齢の方でも使いやすい飲み薬もある。
がんに対する新しい治療や薬の治験も進んでいるので、希望を持ちたい。
 
数値が患者に不安を与えることもあるが、こうした「見える化」は患者にとっても大事。
医師との議論に活用できる。
患者自身が残したデータを次の世代に活用してもらうことも重要となる。

参考・引用
朝日新聞・朝刊 2016.1.26


<関連サイト>
がん10年生存率公表  平均58%、部位で差
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO97020060W6A200C1TZQ001
国立がん研究センターなどの研究班が1月、がんの10年生存率を公表した。
がん全体の10年生存率は6割で「がんは不治の病」という印象の払拭につながるデータだ。
がん治療の目安は5年とされることが多かったが、乳がんなどはかなり時間がたっても再発リスクがあることも分かった。
患者が医師と治療方針などを話し合う際の参考にしたい。

胃・大腸、5年後から横ばい/肝臓、下降続く
データの対象は、全国がんセンター協議会に加わる16のがん専門診療施設で1999~2002年に診断・治療を受けた3万5287人だ。
すべてのがんの10年生存率は約58%。部位別でみて治療成績がよかったのは甲状腺や前立腺、乳房、子宮体部、子宮頸部の各がんで70%を超えた。
一方、食道、胆嚢・胆道、肝臓、膵臓のがんは厳しい状況だった。
 
生存率はがんの大きさや広がり具合を表す4段階(1~4)の病期(ステージ)によって大きく変わる。
どの部位も早期に見つけることができれば生存率は高くなる。
例えば、食道がんは早期がんである1期では約64%で全症例の約2倍になる。

しかし、膵臓がんは早期の1期で見つかっても厳しい。
がんの進行が早く、小さいうちから周囲に広がったり離れた場所に転移したりするからだ。
肝臓がんは手術で切除しても、別の部分から再発しやすく、治療が難しいという。

10年生存率と同じ集団での5年生存率は約63%。
その後の5年間で生存率は5ポイント低下するが、下がり方は部位によって異なる。
大腸や胃は5年たってもほとんど変化がない。
これに対し、肝臓や乳房などは生存率が下がり続け、再発のリスクが高いことがわかった。
このため経過観察して再発予防に努める必要がある。
 
乳がんは治療後、時間がある程度たってから再発する例が専門医の間では知られていた。
今回のデータは、10年は見たほうがよいという医師の助言の裏付けとなる。
乳がんの中でも特定のホルモン受容体を持っているタイプでは、時間がたってから再発する例もあるといわれている。

がんの5年生存率も最新データをまとめた。
04~07年までに診断・治療を受けた14万7354人を対象にした。
年次推移をみると、がん治療法などの進化によって、全体として治療成績が上がっているのも分かる。
97年にはすべてのがんで62%だったが、07年には約69%に上昇した。
 
米国の5年生存率で最もよいデータは70%程度。
今回の調査結果は、日本のがん治療が最先端の水準にあることを示す。
 
部位別で好成績なのは前立腺がん。
97年は約71%だったが07年は100%になった。
ただ、胃や子宮のがんの5年生存率の伸びはよくない。
 
胃がんは手術治療がほぼ確立され、早期発見もある程度されている半面、進行するとなかなか治せない状況が続いていたからだという。
最近は抗がん剤による治療も進化しているため、今後はもう少し数値が上がることが期待される.

がんは日本人の死因として最も多いこともあり、長らく「不治の病」とみなされてきた。
治るケースはまれで、運がよい場合に限るというイメージが強かった。
内閣府が実施した14年度のがん対策に関する世論調査でも、「がん全体の5年生存率は50%を超えている」と回答した人は、4分の1にとどまった。
 
しかし実際には、がんと診断されて10年たっても6割の人は生きている。
まだ課題も残っているが、治る病気になりつつある。
日々の仕事を続けながら、外来で抗がん剤や放射線による治療などを受けられる場合もある。

以前は抗体医薬や分子標的薬はなかった。
治療法が大きく進歩しているので、今、治療をしている人の生存率はさらに高まるはずだ。
 
がんでは定期的に検診を受け、できるだけ早期にがんを見つけて治療することが重要だ。
40歳以上で胃、肺、大腸などのがん検診の受診率は3~4割にとどまる。
国はこの値を5割に引き上げることを目指している。
治る病気でもきちんと備え、正しく対処しないといけない。

参考・引用
日経新聞・朝刊 2016.2.7


「がん」 10年生存率
http://osler.jugem.jp/?day=20171004

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