子供の夏風邪に注意

子供の夏風邪に注意

夏休みを迎えた子供たちに忍び寄る夏風邪。
安静にしていれば治るウイルス感染症が大半だが、今年は脳炎を引き起こすウイルスが多くみられ、注意を促す声もある。予
防法や症状の見分け方を知っておこう。
 
子供がかかりやすい夏風邪には、プール熱(咽頭結膜炎)やヘルパンギーナ、手足口病などいくつかある。症状には特徴があり、種類によっては重症化の可能性もある。
 
国立感染症研究所の調査によると、今年(2018年)はプール熱が6月から本格的に流行。
アデノウイルスによる感染症で、プールの水の塩素殺菌が不十分だった時代にプールで感染が広がったのが名前の由来だ。
38度以上の発熱やのどの痛み、目の結膜炎といった症状が出る。
高熱は5日前後続くこともある。
 
7月から8月にかけては、ヘルパンギーナと手足口病がピークを迎えようとしている。
 
ヘルパンギーナは熱が急に出て、口の中に水疱性の発疹ができる。
水疱は喉の奥にある口蓋垂の周りにもでき、破れると潰瘍になって、激しく痛む。
強い痛みが原因で、食べたり飲んだりするのが難しくなる。
 
手足口病でも口の中に水疱ができる。
名前の通り、手のひらや足の裏にも水疱ができて、発熱がみられることがある。水疱の皮は厚く破れにくく、歩くと痛むことも。
主にエンテロウイルスやコクサッキーウイルスによって発症する。
 
さらに今年は、手足口病の原因ウイルスとして「エンテロウイルスA71」と呼ばれる種類が多くみられることが分かってきたという。
 
エンテロウイルスA71は、脳炎を発症するリスクが高い。
脳炎を発症すると死に至ったり、まひなどの後遺症が残ったりする例もある。
同ウイルスが原因の脳炎は、2000年前後からアジアで流行するようになり、東南アジアや中国、台湾などで多数の死亡例が出たことで知られている。

この夏は例年にも増して特別な注意が必要といえるが、夏風邪を防ぐためにできることは冬のインフルエンザ対策と同じく、うがいと手洗いに尽きる。

外出から戻ったら、せっけんで手や指を30秒ほどこすり洗いするのを習慣にしよう。
 
特に妊婦や小さい子供のいる家庭では、細心の注意が欠かせない。
エンテロウイルスA71に感染しやすいのは0歳児で、特に3カ月未満で起こりやすい。
家族を通じて外からウイルスを持ち込まないように気を付けることが重要だ。
 
夏風邪にかかった場合は、対症療法が中心になる。
安静にして、解熱鎮痛剤などで症状を抑えながら回復を待つ。
ただし5日過ぎても症状が改善しなかったり、水分が取れないほど症状が重かったりする場合は、病院を受診したほうがよい。
 
夏風邪の発症時に欠かせないのが、脱水症状の予防だ。
特にヘルパンギーナと手足口病にかかると口の中が痛むため、つい水を飲むのを控えがちになる。
のどの渇きを訴えられない乳幼児は、尿の色が濃くなると脱水のサインだ。
体温並みに温めた経口補水液や、少量の塩を溶かした白湯などを飲んで、十分な水分を取りたい。
 
夏風邪は安静にしていれば治る病気だと軽視されがちだが、子供が保育園に通えなくなるなど、意外に影響は大きい。
くれぐれも手洗いとうがいを忘れずに、予防に努めよう。

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2018.7.21


<関連サイト>
子供の「夏かぜ」、流行る時期は?どんな病気?対処法や治療法も
https://sho.jp/topic/2257

プール熱(別:咽頭結膜熱)
https://medicalnote.jp/diseases/プール熱

手足口病(てあしくちびょう)・ヘルパンギーナ
https://medicalnote.jp/contents/160812-007-ZW

虫垂炎

急なズキズキ 虫垂炎かも

早期発見なら手術いらず 体力低下する夏場注意 / 食生活 気をつけて
「盲腸」の呼び名で知られる虫垂炎。
幅広い年代で見られる身近な病気だが、実は10代前半を中心に子供に多い。
夏休みの終盤にかけて発症が増える傾向もあるという。
症状の特徴や対処法は・・・。

虫垂は盲腸の先端から突き出た直径4~5ミリ、長さ5~7ミリほどの細長い管状の組織。
虫垂炎とは、虫垂が細菌感染を起こし、中が詰まってしまった状態を指す。
 
約15人に1人がなるといわれるほど身近な病気で男性のほうが多い。
小学校高学年から中学生の発症が多く、国内の1万人当たりの虫垂切除数(年平均、日本小児救急医学会)をみると、10~14歳の男性で13.2人、女性で8.5人。
これは50代の発症と比べ約3倍と、他の年齢層より突出している。
 
夏に増えるという報告もある。
夏休みが終わる頃に、病院へ救急搬送される例が多い。
夏の疲れによる体力低下が一因になっているのかも知れない。
 
虫垂炎になると危な腹痛に襲われる。
みぞおちやへその周りがズキズキと痛み出し、続いて食欲不振や吐き気、嘔吐が起こる。
数時聞から半日ほどで、痛みは腹部の石下に移るのが典型的な症状だ。
 
心当たりがあれば、単なる腹痛と思い込んで我慢せず、すぐに受診しよう。
手でおなかを押して離すときに激痛が走る、37~38度の発熱を伴うといった特徴もある。

私的コメント
「手でおなかを押して離すときの激痛」や「37~38度の発熱」が見られる場合はかなりの重症で腹膜炎を合併している可能性があります。
したがって、普通に見られるものではありません。

虫垂内には石のように硬くなった「糞石」ができることが多く、これがあると重症化しやす」。
まれに魚の骨や歯、義歯、金属類などが詰まりの原因になるケースもある。
 
虫垂炎の治療は早いほどいい。
高齢者の場合は症状を感じにくく、来院時にはすでに重症という例もあるという。
治療が遅れると、虫垂が破れて腹膜炎に至るおそれがあるので、注意が必要だ。
 
以前は虫垂を切除する外科手術が主流だった。
今は「取らずにすむなら、なるべく手術はしない」という。
かつて虫垂は切除しても特に影響がないと見られていたが、近年の研究で免疫や場内細菌のバランスを保つ役割があるとわかってきたからだ。
  
早期なら抗菌薬の治療で治る場合も多い。
ただ、薬の治療では約1~3割は再発するため、最終的に手術を受ける人もいる。
 
子供の虫垂炎の診断には、超音波検査を優先する。
ただし
・虫垂に穴が開いているおそれがある
・太っていて超音波が届きにくいという場合
は、コンピューター断層撮影装置(CT)による検査も必要となる。
 
手術は開腹と腹腔鏡によるものがある。
傷が小さく、術後の痛みも軽い腹腔鏡手術が半数を超えている。
へそから内視鏡を入れ、下腹部に開けた2か所の約5ミリの穴から器具を出し入れして、虫垂を切除する。
へその穴だけを便う「単孔式手術」も徐々に増えてきた。
 
虫垂が破れてうみがお腹にたまる重症例の場合、最近は抗菌薬で炎症を鎮めて、数カ月後に手術する「待機的虫垂切除術」が増えている。
手術時の傷が小さくてすみ、合併症も減る。

虫垂炎の予防は可能だろうか。
虫垂炎の人は、「そうでない人より食物繊維の摂取量が少ない」「便秘の人は再発しやすい」といった報告がある。
日ごろから食事に気をつけ、腸内環境を整えておこう。
免疫力の低下を防ぐため、疲れやストレスをためないことも大切だ。
 
<まとめ>
虫垂炎の症状はこんなふうに現れる
 みぞおちやへその周りが突然ズキズキ痛む

 食欲不振や吐き気、嘔吐が起こる
 ↓ 数時間~半日ほどで 
 痛みがおなかの右下に移動
 ↓
 37~38度の発熱
 ↓
 我慢せず受診を

現在の治療法は
 薬物療法
  抗菌薬で炎症を抑える
   取らずに済むなら、なるべく手術はしまい
 外科手術
  虫垂を切除する
   開腹手術
   腹腔鏡手術


参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2018.8.11


<関連サイト>
強い痛み・血圧急低下… 大人の盲腸、重症化に注意
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO80493430U4A201C1EL1P01

「虫垂炎スコア」が小児急性腹症の診断を支援
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201710/553365.html
急性虫垂炎にはまず抗菌薬投与が主流に
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/yokoban/201709/552497.html

虫垂むやみに取らないで 腸内細菌のバランス保つ
https://www.nikkei.com/article/DGXNZO69714510R10C14A4CR8000/
大阪大のチームは虫垂を切除したマウスと、していないマウスを比較。切除したマウスの大腸内では、腸内細菌のバランス維持を担う抗体を作る免疫細胞が半分になっており、バランスも崩れていた。虫垂でできた免疫細胞が大腸と小腸に移動していることも確かめており、虫垂が腸内細菌のバランスを保つのに役立っていることが分かった。
(2014.4.11)

「急性虫垂炎に対するInterval appendectomyと抗菌薬選択」
http://medical.radionikkei.jp/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-180221.pdf
・基本的治療方針は入院後に抗菌薬静脈内投与 48 時間、6-12 時間の間隔で患者を評価し改善し痛みが制御されれば食事開始、7 日分の経口抗菌薬投与で退院、48 時間以内に 改善しないか悪化で手術を検討とされている。
・糞石を伴う症例が、有意に 保存的治療に抵抗性。
・虫垂炎の起炎菌 となりうる Gram 陰性桿菌や嫌気性菌をターゲットに選択しますので、第二~三世代セフェム系(一日 一回投与ですむセフェム系のセフト リアキソンなど)を中心にし,これにアミノグリコシド系やクリンダマイシンを中心としたリンコマイシン系を併用する施設の報告が多い。

がん免疫チェックポイント阻害剤

がん免疫チェックポイント阻害剤、副作用の対応が課題

がん細胞が免疫にかけているブレーキを解除して、免疫の攻撃力を取り戻す「免疫チェックポイント阻害剤(薬)」は、4年前に国内で最初に発売されて以降、種類も対象となるがんも増えた。
一方、副作用が従来の抗がん剤と異なるため、患者や家族への注意喚起や、がん治療にかかわることの少なかった診療科との連携が重要になっている。

免疫へのブレーキに対抗 チェックポイント阻害剤とは
東京在住の男性(81)は2016年12月、歯科の受診がきっかけで上あご歯肉に悪性黒色腫(皮膚がん)が見つかった。
上あごを全摘する手術は体調などから難しいと判断され、都立駒込病院(東京都文京区)で免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」の治療を受けることになった。
 
17年4月、入院して最初の点滴投与を受けた。
男性は妻(74)と一緒に、起こる可能性がある副作用や副作用に伴う体調変化について詳しく教わった。
2回目の投与からは外来で行うため、看護師らから「こんな症状が出たらすぐに病院に連絡して下さいね」と、息苦しさや発熱など20項目以上の体調変化を記録する手帳も渡された。
 
2週間ごとの投与を13回受けた10月、治療前に真っ黒だった上あごの歯肉が肌色に戻った。
が、妻は、夫の食欲が低下し、だるそうな顔をしているのが気になり、主治医のY皮膚腫瘍科部長に相談した。
 
血圧や血糖値などを調整する副腎に障害が起き、副腎からホルモンが出なくなっていた。
気づくのが早かったので重い症状には至らず、オプジーボの投与も1回休んだだけで継続できた。
今もホルモン補充療法を続けながらオプジーボ投与も受けている。
「2年前より体重が約4キロ増え、体調がいい」と男性は話す。
 
従来の抗がん剤は種類によっては、がん細胞のほかに正常な細胞も攻撃してしまい、正常な細胞が傷ついて副作用が生じる。
ただ、毛根や腸など傷ついた細胞の周期に応じて、3週目以降に脱毛など、いつどのような症状が起きるかほぼ予測できる。
 
これに対し免疫チェックポイント阻害剤は、著しい効果を発揮するケースがある一方、従来にない形で副作用が生じることがある。
免疫ががん以外の細胞も攻撃してしまい、自己免疫疾患のような症状が出る患者がいるのだ。
 
いつ、どこに、どんな障害が起きるのか予測が難しい。
投与後1年以上経って起こることもある。
早期発見、早期治療が重要で、患者さんや家族は体調の変化に敏感になる必要がある。
 
日本で承認を受けた免疫チェックポイント阻害剤は6種類。
対象のがんも悪性黒色腫や非小細胞肺、腎細胞、頭頸部、胃のがんなどに広がった。
国内では最も早い14年に販売が始まったオプジーボだと、重篤な有害事象(副作用)は今年6月末までに6149件報告があった。
発生頻度は従来の抗がん剤より低いが、種類は間質性肺炎、大腸炎、劇症1型糖尿病、副腎や甲状腺などの内分泌機能障害、重症筋無力症など多岐にわたる。

私的コメント;
たの薬剤ではあまり見られないような比較的重篤な副作用が多いように思われます。 

このため、主にがん治療を担う皮膚科や呼吸器内科、腫瘍内科などに加え、副作用への対応で協力が必要な診療科や看護部、薬剤部などがチームを作って治療する病院も増えている。
 
九州大学病院(福岡市)は16年、免疫チェックポイント阻害剤の委員会を立ち上げた。
呼びかけ人のN教授(呼吸器科)は「自分の専門外の領域で起こる副作用の最低限の知識を持ってもらい、複数の診療科がスムーズに連携して迅速に対応できるようにするのが狙い」と説明する。
 
委員会は、副作用ごとに検査や治療の流れをまとめた対応ガイドを作った。
患者が来院時、がん看護外来の専門看護師らが詳しく体調を聞き取って重症度を国際標準に従って数値で評価、調査表に記入して外来の診療室や化学療法室に持参してもらう。
 
調査表は一目で見てわかるので、忙しい医師や薬剤師と、患者の体調についてきちんと情報が共有できる。
 
今後、複数の免疫チェックポイント阻害剤の併用や、既存の抗がん剤などとの併用も広がる見込み。
新たな副作用が起こる可能性もあるため、病院全体で速やかに対応する体制が一層必要となる。

免疫チェックポイント阻害剤の使用中に気を付ける症状
目がかすむ、見えにくい
→ ぶどう膜炎の可能性

目が黄色くなる
→ 肝障害の可能性 

疲れやすい、だるい、体重の増減
→ 甲状腺、下垂体、副腎など内分泌機能異常の可能性
  
たんの無い乾いたせきが出る、息切れがする
→ 間質性肺炎の可能性
  
のどかひどく渇く、水を多く飲む、尿量が増える
→ 1型糖尿病の可能性
  
腹痛を伴う下痢、血便が出る
→ 大腸炎の可能性
  
尿量が減る、血尿が出る、むくみが強い
→ 腎障害の可能性
  
ものが二重に見える、手足に力が入らない
→ 重症筋無力症、筋炎の可能性
 
運動のまひ、感覚のまひ、手足のしびれ
→ 神経障害の可能性
  
皮膚がかゆい、発疹が出る
→ 皮膚障害の可能性

参考・引用 一部改変
朝日新聞・朝刊 2018.8.8

役割増す精神腫瘍医

役割増す精神腫瘍医 がん患者や遺族 対話で心のケア 弱音受け止める存在に

日本人の死因のトップを占める「がん」。
痛みやストレスに向き合うがん患者本人やその家族、遺族らに寄り添い、心のケアを重視する精神腫瘍医の役割が広がっている。
がんを宣告された途端に死を意識して追い詰められる人も多く、精神疾患の予防や、遺族の生活支援の一策として効果が期待されている。

「人生が変わった」
IT関連企業に勤めるSさん(59歳、男性)は2015年夏、国立がん研究センター(東京)で最も進行したステージの肺がんと診断された。
手術は不可能で5年生存率は5%という。
「自分が死ねばマンションのローンが払える」と考え、生きることをあきらめようとしていた。
 
抗がん剤治療では激しい痛みが続き、不安感や家族を残す無力さで精神的に混乱していた。
そんなときに主治医が勧めたのが同センターの精神腫瘍科科長のS医師だった。

「一家の大黒柱だから家族には弱音を吐けない」。
そう思っていたSさんだったが、S医師に苦しい心の内を包み隠さず明かした。
「怖がってもいい」「泣いてもいいのでは」。
そう声をかけられ、前向きに生きるきっかけとなった。
 
Sさんは今でも月1回外来に足を運ぶ。
一時の悲観的な考えは消え、自分の経験を他のがん患者に伝える仕事を企画するほど元気になった。
「悩んでいるとき、一緒に迷子になってくれた。おかげで人生が確実に変わった」(Sさん)
 
S医師のもとを訪れるのは患者だけではない。
今年4月、外来に訪れたKさん(56歳、女性)はゆっくりとした口調で「本来であれば息子はこの春で社会人でした」と絞り出した。
 
Kさんは2017年2月に当時21歳の息子を小児がんで亡くしてから、月1回程度通う。
「この間が命日だったので、思うことがありまして」。
Kさんが切り出すとS医師は「そうですよね」と深くうなずきながら聞き入った。
 
この日、Kさんは30分ほど最近の生活や感じていることなどを打ち明けた。
悩みの相談だけでなく、近況報告だけで終わるときもある。
Kさんは「普段は気が張ることが多いが、ここは何でも話していい。自分の話を聞いてもらうだけでいつも少し楽になって帰ります」とほほ笑む。
 
S医師は「患者のみならず、家族や遺族も自責の念で精神的に追い込まれることがある」と指摘。
「こちらから質問して本人がはっと気づくこともある。我々が何か答えを出すのではなく、やりとりを通じて苦しい人を解放してあげることが役目」と話す。
 
精神腫瘍学はがん患者の心のケアを目的に1970年代から欧米で広がった。
心理学(サイコロジー)と腫瘍学(オンコロジー)を組み合わせて「サイコオンコロジー」とも呼ばれる。日本では86年に学会が設立。
17年時点の会員数は約2千人で世界最大規模だ。

うつ病の防止に
がん患者や家族らの精神面の支援は長らく医療現場の課題だった。
日本医療政策機構が10年にがん患者団体に所属する患者やその家族など約1440人を対象にした調査では、約2割が医療機関でのがんの診断について「不満足」や「どちらかといえば不満足」と回答。
そのうち過半数が「精神面に対するサポートが不十分」と感じていた。
 
こうした問題を解消しうるサイコオンコロジーの国内における広がりを受け、当初は患者の心のケアが主に行われていたが、00年代半ばから家族や遺族も継続的に支援していく動きが出てきた。
先駆けとなったのが、埼玉医科大国際医療センター(埼玉県)のO教授が06年に日本で初めて立ち上げた「遺族外来」だった。
 
遺族は気持ちの整理がつかないうちに葬儀の準備などに追われる一方、親族からの何気ない励ましの言葉で傷つく場合もある。
 
O教授は「うつ病になる遺族は多い。親族間のトラブルに巻き込まれるケースもあり、しっかりケアしていく必要があると気づかされた」と話す。
遺族のみならず、患者の治療の質を上げるために家族の思いに耳を傾けることも大事だと指摘する。
 
ただ外来の6割を占めるのは患者本人。
悪い知らせを伝えなければいけない瞬間も多い。
 
ある年の2月、O教授は余命1、2カ月程度とみられるがん患者の男性に「私は桜の花は見られますか」と尋ねられた。
曖昧な答えはできないと感じ、「見られないと思います」と告げたところ、男性はすがすがしい表情で「ありがとう」と口にしたという。
 
若くして死と向き合った患者や、伴侶を失い落ち込んだ遺族などO教授は多くの人の声に耳を傾けてきた。「つらいことを話すときは複雑な思いになるが、きちんと伝えるのが使命」と強調する。
今では毎月約200人の患者や遺族などと接し、遠方からO教授のもとを訪れる遺族もいる。

地域に偏り 登録医少なく アクセス向上が課題
患者や家族の心のケアの重要性が認識され始める一方、精神腫瘍医の地域偏在が課題になっている。
日本サイコオンコロジー学会は2009年から、医師の勤務歴など一定の基準を満たす精神腫瘍医を「登録精神腫瘍医」として認定している。
多くのがん診療連携拠点病院に精神腫瘍医は配置されているが、西高東低の傾向が強く2018年6月時点で認定者は75人だ。
 
医療現場では認定についての認知度がまだ高くない。
 
精神腫瘍医の数は確実に増えているが、患者のアクセスのしやすさなど、まだまだ課題が多い。
学会は登録精神腫瘍医の認定者を100人にまで増やすことを当面の目標としており、将来的には会都道府県に配置することを回指している。

参考・一部引用改変
日本経済新聞・朝刊 2018.7.23


<関連サイト>
精神腫瘍科を知っていますか?
https://www.sangyoui.co.jp/news/blog/000063.html

心の専門家に相談しましょう
http://www.cancernet.jp/seikatsu/mind/hints/expert/

緩和ケアにおいて心身医学はどのような貢献ができるか?
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbm/20/1/20_1308/_html/-char/ja

睡眠薬・抗不安薬

睡眠薬・抗不安薬 ご注意を 処方量だけで依存症も

服用やめ体調悪化
医師から処方された睡眠薬・抗不安薬を飲んでいて、薬物依存になってしまう患者がいる。薬をやめられなくなったり、やめた後に離脱症状が出たりして、苦しんでいる。
広く使われている薬だが、量を減らす試みも始まっている。

長野県松本市に住むW.Dさん(47)はニュージーランドから1992年に来日し、英語教師や国際交流の仕事に携わっていた。
日本語が堪能で、仕事は順調だった。
 
2000年にめまいの症状が出て、耳鼻科にかかった。
脳の病気と診断され、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を処方された。
この薬は不安、不眠、抑うつといった症状がある患者に、広く使われている薬だ。
 
飲み始めると、めまいは落ち着いたものの、2ヵ月たたないうちに体のふらつきが起きた。
4ヵ月後からは強い不安に悩まされた。
 
仕事を続けられず、01年にニュージーランドに帰国。
ベンゾジアゼピン依存症と診断された。
薬物中毒治療専門の医師を受診し、薬の量を少しずつ減らしてゼロにした。
しかし、断薬後も離脱症状に苦しんだ。
 
ひどい不安感や情緒の不安定。
光を異常にまぶしく感じ、テレビを見られない。
体に力が入らず歩けない。
断薬して1年間で多くの症状は消えたが、突然の不安感は10年ごろまで続いた。
依存症は生き地獄。
希望を失う人もいる。
離脱症状の適切な治療を受けられる施設が必要でだ。

神戸市の40代男性も、べンゾジアゼピン系抗不安薬の離脱症状で苦しんできた。
社会不安障害と診断され、09年まで4年半、医師の指示通り飲み続けた。
やめた2日後から、異様にまぶしい、目が痛いなどの症状が出た。
医師に相談すると「離脱症状の可能性がある」と言われた。
今でもまぶしさや、まぶたのけいれん、筋肉がぴくぴくする症状があるという。
 
ベンゾジアゼピンの常用量依存とは、医師が治療のために処方する常用量でも
長期間使うことで薬の依存が起きる状態を指す。
8カ月以上続けるとなりやすいという報告もある。
薬をやめると離脱症状として不安や、不眠、発汗、けいれん、知覚過敏などが出るこ
とがあるとされる。

自己判断で中止は危険 
欧米では1970年代以降、ベンゾジアゼピン系薬による依存や乱用が問題になり、英国では処方日数が制限された。
日本で長期に漫然と使われているのは問題だ。
医師が依存をつくっているともいえる。
 
薬をやめられない患者や、やめた後の症状に苦しむ患者から相談を受ける医師も多い。
1年以上かけ少しずつ薬を減らしてやめた人もいる。
急にやめると離脱症状が出る。
患者の自己判断でやめてはいけない。
 
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部では、精神科がある全国の病院を対象に、薬物関連障害の調査を2年ごとに実施している。
原因の1位は覚醒剤、2位は有機溶剤が定位置だったが、2010年年に、それまで3位だった睡眠薬・抗不安薬が有機溶剤を上回って2位になった。
全体の17.7%を占め、この薬による依存は珍しい問題ではないという。
 
薬の量をなるべく減らそうという動きもある。
 
ある大学病院では、ベンゾジアゼピン系薬を処方されている患者数が一昨年の8588人から昨年は7054人に約18%減った。
医師と薬剤師が対策に取り組んだ結果だ。
 
ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬の作用や副作用、薬以外の対処法を知ってもらおうと、患者向けの冊子をつくって薬剤師が配った。
医師や薬剤師が参加する勉強会も開いてきた。
 
患者は副作用に気付いていないこともあるので、情報提供が大切だ。
薬をやめるときは1年で半減するくらいゆっくりと減薬すつことがポイントだ。
 
厚生労働省は薬の使い過ぎ対策に乗り出す。
1回の処方で抗不安薬を3種類以上出した場合、医療機関に払われる診療報酬を減らす改定を(2014年)10月から実施する。

参考・一部改変引用
朝日新聞・朝刊 2014.7.22


<関連サイト>
ベンゾジアゼピン系睡眠薬 解説
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf8272.html
(要パスワード)
脳の活動(興奮)を抑えることで眠りやすくし、睡眠障害などを改善する薬
・脳内で神経興奮に関わるベンゾジアゼピン受容体(BZD受容体)というものがある
・本剤によりBZD受容体が刺激されると、脳の興奮が抑えられ眠気などがあらわれる
・超短時間型:トリアゾラム(主な商品名:ハルシオン)
 短時間型:ブロチゾラム(主な商品名:レンドルミン)、ロルメタゼパム(商品名:エバミール、ロラメ
 ット)、リルマザホン(主な商品名:リスミー) 
・中間型:フルニトラゼパム(主な商品名:サイレース、ロヒプノール)、エスタゾラム(主な商品名:ユ
 ーロジン)、ニトラゼパム(主な商品名:ベンザリン、ネルボン) 
・長時間型:クアゼパム(主な商品名:ドラール)、ハロキサゾラム(商品名:ソメリン)、フルラゼパム(商品名:ダルメート)

本剤(BZD系睡眠薬)はあくまでGABAを介した作用をあらわす特徴(仮に過量投与となり薬剤成分が飽和的にBZD受容体に結合した場合でもGABAの作用を増強させることには限度があるとされる)などから、本剤以前に開発されたバルビツール酸系睡眠薬などに比べると一般的に安全性や有用性などが高いとれ、生命の維持機構に関連する脳幹の抑制などへの懸念がかなり少ないといったメリットが考えられる。
ただし、持ち越し効果(睡眠薬の効果が翌朝以降も持続し、ふらつき、脱力感などがあらわれやすくなる)、筋弛緩作用(筋肉の緊張が緩むことで、ふらつき、転倒などがあらわれやすくなる)、健忘(一過性の物忘れ)などの副作用への注意は必要となる。
通常、作用持続時間の長い薬剤ほど持ち越し効果や筋弛緩作用があらわれやすい傾向があり、特にふらつきや転倒などによるリスクが高い高齢者などに対しては注意が必要となる。


非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(非BZD系睡眠薬) 解説
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf8271.html
(要パスワード)
・ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べ、筋弛緩(筋肉の緊張が緩み力が入りづらくなる)作用が少ない
・一般的に、脱力や転倒などの副作用が少ないとされる
・アモバン、マイスリー、ルネスタなど

入院中に薬で健康被害 薬剤性有害事象

入院中に薬で健康被害

医療事故の報告、調査制度の対象は医療機関が「事故」と判断したものだけだが、医療行為に伴う健康被害はもっと幅広い。
 
京都大などの研究グループが2004年に東京、京都、福岡の大病院の入院患者3456人を対象に、薬による健康被害を調べた。

薬の種類や量の間違いのほか、通常の治療を通じて起きた消化管出血やアレルギー反応、薬剤が原因と考えられる下痢、腎機能低下も「薬剤性有害事象」として集計した。
 
その結果、5人に1人に当たる726人で1010件起きていた。
死亡が14人、生命にかかわる被害が46人にのぼった。
だが有害事象のうち院内で報告されたのは4%足らずだった。
 
この研究を行った兵庫医大M教授(臨床疫学)は09年に小児患者、10~11年に精神科病院の患者で同僚の調査を実施。
薬剤性有害事象は前者で5人に1人、後者では2人に1人以上で起きていた。
M教授は「入院中に予期しない症状が出たらまず薬を疑ってほしい。
医師の処方を点検し、患者の状態を薬剤性有害事象の観点から検討する薬剤師のチェック機能を高めることが重要だ」と指摘する。

参考・一部引用
朝日新聞・朝刊 2018.7.11

<私的コメント>
ごく最近、重篤な薬剤アレルギーを経験しました。
それは他の医療機関でピロリ菌除菌のための薬剤を1週間処方されて服用した方でした。
ちょうど服用が終わったころから全身に薬疹が出始め、口腔粘膜にも変化が出たため皮膚科を受診。
ステロイドの塗布にて悪化したため当院を受診されました。
塗布剤は中止してステロイドの点滴と内服にて軽減しました。
他に、エフェドリン含有の薬剤で重篤なアレルギーが起きた症例もあります。
重篤な薬疹の場合には、軽快するまでに1か月以上必要な場合があります。


<関連サイト>
薬剤性有害事象の臨床疫学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscpt/44/4/44_325/_pdf

副作用について理解しよう
https://www.jshp.or.jp/banner/oldpdf/p50-9.pdf
・国際的には、薬剤性有害事象は急性期の医療機関において、患者の7.5~10.4%に発生している。
米国では,薬剤性有害事象は入院患者の16人に1人に発生し、薬剤性有害事象によって14万人が毎年死亡していると推定されている。

・また、別の米国の研究では、100入院患者あたり6.5件、1,000患者日あたり11.5
件の薬剤性有害事象が発生しており、その45%は命に関わる可能性のある医原性有害事象であった。
外来通院中の患者においても同様に薬剤性有害事象は多く、米国では入院理由の1.4%が薬剤性有害事象と報告されている。
また,外来で処方を受けている患者の25%が薬剤性有害事象を経験している。
薬剤性有害事象の28~56%は予防可能であり、その多くは処方時のエラーである。

・薬剤性有害事象は日常診療で気付かれることは少なく、実際に発生している薬剤性有害事象の3.7%しかインシデントレポートなどの医療従事者からの自発報告で認識されず、米国での研究でも同様に3.7%の検出率であった。

・薬剤性有害事象は日常診療で気付かれることは少なく、実際に発生している薬剤性有害事象の3.7%しかインシデントレポートなどの医療従事者からの自発報告で認識されず、米国での研究でも同様に3.7%の検出率であった。


科学的な安全対策への転換をめざして(2) ―個別の有害事象が副作用になるまで―
https://www.pmrj.jp/teigen/PMDRS_45-2-098.pdf
副作用 ( A D R) の 疑 い 」と い う 用 語は,医療従事者あるいは研究者が個々の症例におい て薬がイベントに関連するかもしれないと判断したときに用いる。
定義上、企業や行政に自発報告される症例報告は、「副作用(ADR)の疑い」である。
一方、「副作用(ADR)」という用語は、薬 x が作用 y を引き起こしうることが広く認められている場合に用い、個々の症例に関して用いられるべきではない。

副作用と有害事象・副作用の重篤と非重篤
http://www.jga.gr.jp/jgapedia/column/_19351.html

私的コメント;「日本ジェネリック製薬協会(JGA)」ではこのような記事をHPに掲載しています。
しかし、ジェネリックを使用していて副作用が出現した場合、多くのドクターは副作用報告書を提出しません。
それはジェネリック製薬会社との連絡が先発医薬品メーカーほど容易ではないためです。
「ジェネリックに副作用なし」といわれるのはそういった事情からです。
「安ければいい」という影にはこういった問題があることも知っておいていただきたいと思います。

正しい鼻のかみ方

正しい鼻のかみ方

片足ずつ、ゆっくりと
鼻を強くかみすぎて、中耳炎になった経験をお持ちの方もいるはずだ。
正しい鼻のかみ方とは? 

正しい鼻のかみ方のポイントは、片方ずつゆっくりかんで、強くかみすぎないことだ。
子どもたちに鼻をかんでもらうと、両方の鼻を一気にかむ子が多い。
正しいかみ方は、意外に知られていない。
 
両方の鼻を一気にかむと、鼻の中の圧力がうまく逃げず、耳に負担がかかる。
細菌を含んだ鼻水が耳に入って中耳炎になったり、鼓膜が破れたりすることもある。
まれに内耳からリンパ液が漏れる「外リンパ瘻」という病気になり、突然のめまい、難聴を引き起こすこともある。
鼻水が詰まっているときは、無理に出そうとしないことが大切で、病院で治療した方が良いケースもある。
 
鼻水をすする習慣も、長く続けると鼓膜がへこみ、内側に耳あかがたまる「真珠腫性中耳炎」のリスクを高める。
耳の中の骨が溶け、聴力低下や顔面まひ、めまいを引き起こすことがある。
 
あるティッシュペーパーのメーカーは2016年、15歳以下の子どもを持つ母親1千人を対象に、正しい鼻のかみ方を知っているかインターネットで調査した。
「両方の鼻をいっしょにかむことが間違った方法だと知っているか」という設問に、31.5%の母親が「知らなかった」と回答した。
 
母親の4人中3人は「自身の親から鼻のかみ方を教わった」としており、同社広告宣伝部では「まずは母親が正しい鼻のかみ方を知ってほしい」と話す。
風邪や花粉症で鼻をかむ機会が多いときや肌荒れが気になる人は、保湿成分を含み肌への摩擦を減らしたタ
イプのティツシュがおすすめという。

花粉が多量に飛ぶ時期から薬を始めても効きにくい。
花粉症による鼻水を抑えるには、花粉の飛び始めの時期に早めに病院を受診し、自分に合った飲み薬や点鼻薬などの処方を受けたい。   

参考・一部改変引用
朝日新聞・朝刊 2018.1.20

体の疲労「脳が原因」

体の疲労「脳が原因」 交感神経酷使、細胞にダメージ

仕事や生活上の疲れがなかなか取れないという人が多い。
疲労の原因は脳の神経細胞にダメージが蓄積するためであることが国内の研究でわかってきた。
疲労のメカニズムや、上手な睡眠の取り方など疲労との付き合い方はどうすればいいか。
 
なぜ疲れるのか。
長く言われていたのが「乳酸原因説」だ。
運動すると筋肉中に増える乳酸が疲労の原因という見方だが、この説は10年ほど前に否定された。
今では乳酸は筋肉の活動を促進する有用な成分と考えられている。
これに代わるのが「脳原因説」。
臓器の働きを調節し、体のバランスを維持する自律神経を酷使した結果が疲労だと考えられている。
大阪市や大阪市立大学、食品・医薬品メーカーなどが進めている疲労に関する共同研究「疲労プロジェクト」などにより、そのメカニズムが解明された。
 
自律神経系は活動時に活発になる交感神経と、夜間や安静時に活発になる副交感神経がセットになっている。
運動時には体温や心拍の調整をするため交感神経が活発に働く。
すると神経細胞内に活性酸素が大量に発生し細胞にダメージを与える。
これが疲労の原因だという。
 
同じゴルフコースを回っても、暑い日と涼しい日では疲れ方が全く違う。
暑いと体温調節などに交感神経を酷使するので疲労が増す。

運動による疲労のほか、長時間のデスクワークなどによる精神作業疲労や、目の眼精疲労がある。
事務作業に集中しているときは、やはり交感神経が活発に働く。
また、パソコン画面など近距離を見続けると、自律神経のバランスが崩れやすくなる。
 
ただし、実際の疲労の度合いと、自分で感じる疲労感の間にはズレがあることが、疲労を把握しにくくしている。
疲労感をもたらすのは「疲労因子」と呼ばれるたんぱく質だ。
自律神経などの細胞が活性酸素によって酸化されてダメージを受けると、老廃物の増加が合図となって疲労因子が発生する。
その情報が大脳に伝わって疲労感を生む。
 
だが人間は、脳の働きでこのアラームを感じなくしてしまうことがある。
仕事や運動への意欲や達成感が強いと、疲労感を感じなくなってしまう。
これは「隠れ疲労」と呼ばれている。
過労死になってしまう人は、疲労感を感じなくなっている場合が多いという。

◇     ◇

良質な睡眠 唯一の回復法
疲れをためないため、どんな生活をすればよいのか。
疲労を回復してリセットする唯一の方法が良質な睡眠を十分にとることだ。
就寝中は大脳も自律神経も昼間の重労働から解放され、疲労回復因子と呼ばれるたんぱく質の働きで、脳の疲労が回復する。
 
睡眠の質が悪いと、この仕組みがうまく働かない。
特にまずいのが、いびきをかいている状態。
気道が狭まった状態で無理に呼吸をしている。
血圧や脈拍を上げて酸素供給を維持しようとするので、交感神経が懸命に活動して寝ながら運動をしている状態になっている。
 
いびきをかかないよう、体を横向きにして寝るのがよい。
睡眠外来では「終夜睡眠ポリグラフ」という装置を使っていびきや無呼吸の程度を検査することができる。症状が重ければ、呼吸を楽にする器具を就寝時に使う手もある。
「疲労回復CPAP」という装置も開発され、睡眠時の疲労回復の効果も確認されている。

疲労の原因である酸化ストレスを緩和するには、抗酸化作用のある成分を食事などでとるとよい。
抗疲労プロジェクトでは、ビタミンC、クエン酸、コエンザイムQ10など23種の成分について疲労回復の効果を評価した。
最も効果が高かったのは「イミダゾールジペプチド(イミダペプチド)」という成分。
脳の中で作用しやすいのが特徴だ。
鶏の胸肉や豚ロース、カツオなどに豊富に含まれる。
 
オフィスでの仕事では、「隠れ疲労」にならないよう注意したい。
仕事中に「飽きた」と感じたら、それは脳が疲労のサインを送っている証拠。
無理に集中しようとせず、休息を入れるのがよいという。
 
適度な運動は疲労回復の効果があるが、過度の運動は禁物だ。
大脳の働きで達成感や爽快感が強くなり、疲労を自覚しにくくなる。
「息は弾むが切れない」程度が目安。
入浴も熱い湯に長くつかると、体温や血圧などを調整するため自律神経の疲労がたまる。
就寝1~2時間前にぬるい湯で半身浴をするのがよい。

参考・一部引用
日経新聞・夕刊 2017.3.9



<イミダペプチド 関連サイト>
イミダペプチド(イミダゾールジペプチド)
https://imidapeptide.jp

イミダペプチド
https://imida.jp/imida.html

イミダゾールジペプチド(イミダ)とは
http://www.imida-labo.jp/about/imidazole-dipeptide/

高齢者の心身の衰え 「フレイル」

高齢者の心身の衰え 「フレイル」見逃さない

食事・運動、自治体が指導 要介護への進行防ぐ
高齢者の心身機能が低下する「フレイル」の兆候を見逃さないようにする取り組みが自治体に広がっている。
介護が必要になる手前の段階で適切に指導し、高齢者が健康な生活を維持できるようにするのが目的だ。
高齢者にも効果が出始めている。
 
「体が動かなくなってきたのは年のせいと諦めていたが、毎日軽い運動をしたら調子がよくなった」と語るのは長野県佐久市のAさん(81)。
同市は75歳と80歳の高齢者に全戸訪問して調査票に健康状態を答えてもらっている。
その結果、筋肉量の減少や筋力、身体機能、歩行速度の低下などフレイルの兆しがあると保健師や理学療法士、管理栄養士、歯科衛生士が4カ月間、訪問指導する。
 
Aさんは筋力の低下と滑舌がよくない口腔機能の衰えが目立つとの結果だった。
理学療法士らの指導を受け、イスに座り片足ずつ上げ下げする数分間の運動などを毎日続けたところ、両機能は改善した。
 
フレイルは、2014年に日本老年医学会が命名した虚弱な状態を示す概念で、高齢者が介護が必要になる手前の段階。
加齢に伴い体の機能が低下する「身体的要因」に加え、認知機能の低下やうつなど「精神・心理的要因」、独り暮らしや閉じこもりがちになる「社会的要因」が影響し合っている。
 
フレイルに陥った高齢者を早く見つけて適切に支援すれば、要介護に進むのを防げる。
衰えの兆候が見えたときに栄養を改善する指導や認知機能を改善する運動、社会的な孤立を解消する働きかけをすれば、健康に過ごす時間が延ばせる。
 
厚生労働省もフレイルに注目し、「高齢者の特性を踏まえた保健事業」をモデル事業として2年間実施。
その成果を踏まえてガイドラインを作成し、18年4月から全国の自治体のフレイル対策を支援し始めた。
 
「70歳代を高齢者と言わない都市」宣言をした神奈川県大和市は先行事例だ。
フレイルの兆候の一つ、低栄養の高齢者への働きかけに特色がある。
介護予防アンケートなどで65歳以上を対象に低体重かつ半年間で2キログラム以上体重が減少した人を調べ、栄養士が戸別訪問で状況を把握。
誤った知識で食事を減らした人や経済的な理由で栄養が不足する人などに個別に対策を指導している。
 
愛知県大府市では精神・心理的な要因の改善に焦点を当てる。
国立長寿医療研究センターと協力し認知症の予防対策を進める。
75歳以上を対象に、認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)を見つける「プラチナ長寿健診」を実施する。
 
生活習慣病の予防策として特定健康診査(メタボ健診)は定着したが、これでは60代から出始める老年期特有のフレイルの兆候はつかめない。
食事やカロリー摂取についての考え方は世代ごとに異なり、変えていく必要があり、フレイルの知識は若いうちから知っておく必要がある。
 
対策は始まったばかりだが、自治体の介護予防や健康相談窓口に問い合わせる方法もある。


*自分でできるフレイルチェック
フレイルの兆候は自分でも調べられる。
すぐできるのが両手の親指と人さし指で輪を作り、ふくらはぎの最も太い部分を囲む「指輪っかテスト」。隙間ができるとフレイルの一つ、サルコペニア(加齢などによる筋肉量の減少)の疑いが強いとされる。
栄養や口腔、運動、社会性・こころの4分野の質問に答える「イレブン・チェック」も簡易な方法だ。
 
さらに、機器を使い、深掘りしたフレイルのチェックができる仕組みも開発されている。
2012年から千葉県柏市で行うフレイル予防研究の成果を生かしたもので、研修を受けた市民サポーターがチ
ェックに協力するのが特長。
公民館などに10~30人の高齢者を集め、市民サポーターがほぼマンツーマンで寄り添うため、サークル活動のような雰囲気になる。
 
高齢者約5万人を対象としてある調査では、一人で黙々と運動する人は、運動をしなくても囲碁や地域ボランティア活動に参加する人と比較し、フレイルの危険が3倍高いことが明らかになった。
この結果は、運動以上に「人と人のつながり」がフレイル予防になることを示唆している。

参考・引用
日経新聞・夕刊 2018.8.1

高額な薬物療法

高額な薬物療法 どう考える

手術と抗がん剤、放射線治療に続く4番目の有力ながん治療法として注目されているのが、オプジーボに代表される「免疫チェックポイント阻害薬」だ。
 
免疫細胞は常に体の中を監視し、細菌、ウイルスなどのほか、がん細胞も異物として排除する。
しかし免疫の働きが強くなりすぎるとアレルギーや関節リウマチといった自己免疫疾患などが発生してしまう。
免疫力を自ら抑制する仕組みが備わっており、これは「免疫チェックポイント機構」と呼ばれる。
 
がん細胞は正常な細胞から「進化」する際、色々な能力を身につける。
その一つが免疫から逃れる「免疫逃避」だ。
がん細胞はPD―L1という物質を作り、免疫細胞にできる物質(PD―1)と結合させ、免疫細胞の攻撃にブレーキをかける。
 
オプジーボはPD―1と結合しPD―L1でかけられたブレーキを解除し、免疫細胞の攻撃を再開させる。免疫チェックポイント阻害薬にはオプジーボと同様にPD―1に結合するキイトルーダのほか、PD―L1に結びつく薬剤も開発が進んでいる。
 
免疫チェックポイント阻害薬は従来の免疫力を高めるタイプの治療法と違い、はっきりとした効果があり、オプジーボ、キイトルーダは保険薬として認められている。
特に一定の患者では長く効果が維持され、全身の転移が消えたまま3年以上元気で暮らせるケースも珍しくない。
かつての「転移→余命告知」は過去のものとなりつつあると言える。
 
しかし、免疫力の調整機能に強引にブレーキをかけるわけだから、免疫細胞が正常な臓器をも攻撃しやすくなり、副作用も起こりやすくなる。
また、費用も非常に高く、オプジーボは当初の半額以下まで値下げされたが、それでも年額1300万円以上の医療費がかかる。
ただ、進行した肺がんや胃がんなどは健康保険が使えるから、個人の負担額は限られる。
 
オプジーボの2016年の売り上げは1千億円超だったが、これは放射線治療全体の医療費とほぼ同額だ。
今後も次々と開発されるがんの超高額な薬物療法をどう考えていくかは、国民皆保険制度を維持する上で非常に重要だ。

執筆
東京大学病院准教授・中川恵一先生

参考・一部引用
日経新聞・夕刊 2018.8.1