免疫力低下で突然発症 帯状疱疹

免疫力低下で突然発症 帯状疱疹

赤いポツポツ 免疫力低下で突然発症
ある日突然、顔や体の片側に痛みが起きた後、赤い発疹が現れる「帯状疱疹」。
80歳までに3人に1人がかかるといわれる。
重症化すれば痛みが長く続くこともある。
発症の兆しを察知して、早期に対処したい。
 
帯状疱疹の原因は、水ぼうそうと同じ「水痘・帯状疱疹ウイルス」。
国立感染症研究所の調べでは、日本の成人の9割以上が同ウイルスに感染している。
過去に水ぼうそうにかかったことのある人を含め、ほとんどの人が帯状疱疹を発症する可能性がある。

水ぼうそうが治った後も、ウイルスは感覚神経の根元にある神経節に一生にわたり潜伏。
日ごろはリンパ球がウイルスを記憶し、活性化しないように監視しているが、リンパ球が減ってきたころを狙って、突然暴れ出す。
 
再活性化のきっかけとなるのが免疫力の低下だ。
加齢や疲労・ストレスの蓄積、糖尿病やがんといった病気などが誘因になりやすい。
 
帯状疱疹は夏に多くなる傾向がある。
気温が25度を超えると水ぼうそうのウイルスの感染力が低下するため、夏はウイルスに触れる機会が減る。ウイルスを監視するリンパ球の働きが弱まることで、帯状疱疹を発症しやすくなると考えられる。
猛暑の疲れや夏バテも要因の一つになる。

私的コメント;
「夏はウイルスに触れる機会が減るとウイルスを監視するリンパ球の働きが弱まる」ということですが、水ぼうそう自体も以前と比べて診察室で経験する機会が少なくなりました。
この考え方ははたして正しいのでしょうか。
もし、そうならば接触の機会が一般人より多い小児科医は帯状疱疹になりにくいということになります。
そういったデータも知りたいところです。

再活性化したウイルスは増殖しながら、神経に沿って皮膚の表面に移動していく。
このとき神経や周辺の組織を傷つけるため、ピリピリ・チクチクとした痛みが出る。
数日後には虫刺されのような赤い発疹がポツポツとできて帯状に広がり、水ぶくれになる。
痛みや発疹は体の左右どちらか片側に現れるのが特徴。
顔や頭、胸やおなか、背中、腰、股間などに発症しやすい。

発疹が出てから3日以内に抗ウイルス薬を投与すれば、重症化を防げる可能性が高まる。

頭部に発症すると片頭痛、胸部では狭心症などと他の病気を疑うことも多いが、体の片側の痛みに続いて発疹が現れたら、すぐに皮膚科を受診したい。
治療が遅れると、痛みや皮膚症状が悪化したり、長引いたりしやすい。

私的コメント;
発疹が出る前に抗ウイルス薬を投与するのがベストです。

通常は約3週間で皮膚症状が治まり、痛みも消える。
ただし50代以上では1カ月以上かかることが多い。
高齢者や持病で免疫力が落ちている人、痛みや皮膚症状が強かった人は、3カ月たっても痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」になりやすい。
 
帯状疱疹後神経痛になると、10年以上激痛に苦しむ例もあるという。
帯状疱疹は多忙で休めないときに発症しやすく、受診を先延ばしにする人も少なくない。
後遺症を残さないためにも、早期の診断と治療、休養の確保が重要だ。
 
水痘ワクチンの接種も帯状疱疹の予防に有効だ。
加齢で低下した水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫を再び強化して、帯状疱疹の発症や重症化を防ぐ効果がある。
 
水痘ワクチンは1~2歳児を対象に2014年から定期接種が開始された。
16年には50歳以上の成人が、帯状疱疹の予防を目的に接種することが可能になった。
成人は費用(約1万円)が自己負担になるが水痘ワクチンの接種で帯状疱疹の発症率は半減し、帯状疱疹後神経痛の発症軽減も期待できる。
 
子どもの水痘ワクチン接種の定期化以降、成人の帯状疱疹が増えている。
ウイルスと出合うことで免疫機能が高まる「追加免疫効果」が得られにくくなったからだ。
高齢者や多忙な人は特に、元気なうちにワクチンを接種しておきたい。

参考・一部引用
日経新聞・朝刊 2018.8.25

性不妊 精索静脈瘤

精子つくる機能、多様な改善方法 男性不妊 精索静脈瘤の手術、保険対象に

不妊に悩む男性の8割は、精子をつくる機能に問題があるとされる。
そのなかでも多い、血液が逆流して精巣にこぶができる「精索静脈瘤」に有効な手術が、4月から公的医療保険の対象になった。
食事や生活習慣を見直して精子の状態が改善する人もいて、治療の選択肢は広がっている。

埼玉県の会社員の男性(40)は6年前に妻(30)と結婚した。
子どもを望んだが授からず、昨秋から、不妊治療ができるクリニックに一緒に通い始めた。
 
男性は精液検査で、精子濃度と運動率が世界保健機関(WHO)の基準値より低かった。
これらの数値が低い状態は「OAT症候群」と呼ばれ、精子をつくる機能に問題がある。超音波(エコー)検査で左の精巣の周囲にこぶが確認された。
精索静脈瘤と診断され、手術できる独協医科大埼玉医療センターを紹介された。
 
男性は今年6月、センターで手術を受けた。
4月から保険適用になったばかりの顕微鏡を使う手術で、費用は1泊の宿伯費を含めて約8万円。
保険適用前より患者負担は約15万円少なくてすむ。
男性は「妻と私で不妊治療に毎月4万~5万円使っていた。保険が使えてよかった」と話す。
 
センターによると、手術から約3~6ヵ月後、患者の50~70%で精子濃度や運動率が改善する。
数値が改善しなくてもDNAが損傷した精子が減ったという報告も多い。
9月に検査予定の男性は「精子の状態が良くなることを信じて待ちたい」と話した。

食事・生活習慣も関係 
精索静脈瘤は精巣から静脈を通って心臓に戻る血液が逆流して生じる。
思春期以降にできることが多く、一般男性の約15%にあると言われる。
こぶがあることで精巣の温度が上がるなどして精子をつくる機能が低下、精子濃度や運動率が悪化する。
 
手術では、逆流している静脈を縛って切断する。
別の静脈から血液が流れるようになると、こぶが消え、精子の状態を改善できる。
自然妊娠や体外受精の成功率も高まる。

手術は複数の方法があり、4月に保険適用になった顕微鏡を使う手術は、合併症や静脈瘤の再発率が低いとされる。
一方、高い技術が必要で、時間をかけても丁寧に行うことが治療成績を高めるという。
 
男性の手術を担当したセンターのI 医師は「精巣の周囲に違和感や痛みを感じたり、お風呂上がりに触ってぼこぼこしていたりしたら、精索静脈瘤の可能性がある。泌尿器科を受診してほしい」と話す。

精子の質を高めるため、生活習慣の見直しやサプリメントなどの服用を指導するケースも広まっている。

横浜市立大学生殖医療センターのY部長らは2012年4月~15年9月、不妊男性66人にビタミン剤や漢方薬をのんでもらった。
 
治療前と治療後1カ月、3ヵ月で精子の運動率や濃度が上がり続けた人は約半数の34人、うち13人は妊娠に結びついた。
ビタミンEは抗酸化作用、ビタミンB12は精子をつくる機能を高
めると期待されるという。
 
Y部長が代表を務めた厚生労働省研究班の調査では、不妊男性の8割は精子をつくる機能に問題がある「造精機能障害」。
うち精索静脈瘤は30%、原因不明は42%あった。

Y部長は「原因がわからない人や手術に抵抗がある人にはビタミン剤などの服用、禁煙や適度な運動と睡眠といった生活習慣の見直しを勧めている」という。
 
暮らしぶりとの関係を示す研究も多い。
欧州の研究では、適度に運動する人のほうがそうでない人より精
子の運動状態が良かった。
約2千人を調べた欧州の別の研究によると、不妊の原因がある男性は、パートナーが妊娠した男性に比べて体格指数(BMI)が有意
に高く、肥満傾向だった。
 
熱がこもるボクサーパンツをはくと精子の質が悪くなりやすい、射精しない「禁欲期間」が長いほどDNAが傷ついた精子の割合が高いという報告もある。
      
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2018.7.25

赤ちゃんの舌 大人と違う

赤ちゃんの舌 大人と違う

舌を上げてみると、真ん中に膜のような筋が見える。
口の底と舌の先端をつなぐ「舌小帯」だ。
筋状の部分は舌を前に出したり、後ろへ動かしたりするのを調整する役割を持つといわれる。
 
一見すると、舌小帯で舌が引きつれて、動きが妨げられていると思うかもしれない。
問題があるとすれば、舌小帯が太くて短い「舌小帯短縮症」と呼ばれる状態だ。
舌を前に突き出すと舌の先端にくびれができて、ハートの様な形になる。
この状態だと上手に哺乳できなかったり、発育の時期に滑舌や発音、食事の摂取に支障が出たりする。
 
新生児の舌小帯は舌の先端近くまで付着している。
成長とともに引き伸ばされて、付着部位も舌の中程まで下がってくる。
成長による変化が少ないと舌小帯が短く太いままとどまって、舌小帯短縮症となる。
 
見極めるには大きく口を開けて、舌の先を上あごに着けるように持ち上げてみるとよい。
舌の先が口の縦の幅の半分より上まで上がれば軽度、半分より下なら中等度、下あごの歯の高さまで上がらなければ重度と判定する。
一般的に中等度以上で哺乳や食事、夕行・ラ行の発音に支障をきたすときに治療を検討する。
 
治療は舌を動かすトレーニングと、舌小帯のヒダを切る手術がある。
新生児や乳児の舌小帯短縮症はかつては切除の対象とされていた。
近年は、成長に伴って舌小帯が変化するため、構音障害や哺乳障害の直接的な要因にはならないとの考え方が広がっている。
 
舌小帯短縮症の治療は小児歯科や口腔リハビリテーション科、歯科口腔外科、耳鼻咽喉科などで医師や歯科医師、言語聴覚士が担当する。
医療機関ごとに役割が異なるので、受診する場合はあらかじめ問い合わせるとよい。

執筆;
国立病院機構東京医療センター歯科口腔外科医長・大鶴 洋先生
参考・一部引用
日経新聞・朝刊 2017.10.28


関連記事
赤ちゃんの舌小帯短縮症、発音に影響でないか?
1歳の息子。生後2カ月の時、耳鼻咽喉科で舌小帯短縮症と診断されました。哺乳や食事に支障はないものの、成長してから発音に影響が出ないか不安です。医師からはひどい場合は手術も可能と聞きましたが、必要でしょうか?

■答える人 宮新美智世さん 東京医科歯科大学准教授(小児歯科)
Q どんな病気ですか。
A舌の下側と口の底をつなぐ薄いひも状のものが舌小帯で、乳児期は大人に比べて厚くて短い状態です。
成長に伴って舌の動きが巧みになり、舌小帯も薄くなって伸びますが、何らかの理由で短いままの状態が短縮症です。

Q 生活への影響は。
A かつては母乳がうまく吸えないなど哺乳障害との関係が疑われましたが、現在は否定的な見方が多いです。舌を前に出した時、舌先の真ん中がくぼんでハート形に見えるので、「ハート舌」と呼ばれることもありますが、元々先端がくぼんだ形の人もいるので、形だけでは診断しません。
舌がどれぐらい動くかなど舌の機能で判断します。

Q 発音について心配されていますが。
A 子どもが正確な発音を身につけるのは5歳ごろです。
発音に問題があり、舌小帯が原因と判断された場合は治療対象になりますが、頻度は高くありません。
また5歳以降に治療を受けた上で、発音の訓練を始めても有効だという報告も複数あります。
5歳まででも心配があれば言語聴覚士に相談してください。

Q どんな治療ですか。
A 手術で舌小帯を切って伸ばし、癒着を避けるために縫合します。
周辺には傷つけたくない唾液腺や血管が存在し、形成術や粘膜移植など全身麻酔が必要な症例もあり、低年齢ほど負担です。
相談者のお子さんは1歳で、これから舌小帯が伸びる時期を迎える上、発音に問題がないことも多いので、成長を見守ってあげてください。

子どもの発音の問題
発音に問題を抱える子どものうち、生まれつき口の天井部分に隙間があるために空気が鼻に漏れる「口蓋裂」など手術が必要な原因がある子どもは、それほど多くありません。
記舌小帯短縮症で、発音に問題が生じて手術が必要となるケースも頻度としては高くありません。

発音に問題を抱える多くは、原因がはっきりせず、舌や口の使い方に誤った発音の癖が付いてしまったケースなどが考えられます。
4~6歳で100人に2~4人程度の頻度といわれています。
 
横浜市総合リハビリテーションセンターによると、適切な時期に発音の訓練をすれば改善されるとして、言語聴覚士らへの相談時期の目安を紹介しています。
 
▼発音の特徴と相談時期の目安
・「カ行がタ行になる」「タ行がカ行に」→3歳後半
・「サ行がタ行やシャ行に」「シャ行がチャ行」→4歳後半
・「ラ行がダ行に」→4歳後半

* 鼻に抜けたような発音は、すぐに相談

参考・引用一部改変
朝日新聞 2018.9.14


<関連サイト>
「舌小帯短縮症と発音障害」
http://www.okuchidetaberu.com/colum/no15.html


舌小帯短縮症の考え方
http://www.tmd.ac.jp/dent/pedo/cn5/pg138.html

舌小帯短縮症に対する手術的治療に関する現状調査とその結果
https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=85

小児における舌小帯短縮症の手術時期の検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/poms/21/1/21_69/_pdf/-char/ja
(専門医向けの論文です)

気になる口内炎の対処法

気になる口内炎の対処法

口内炎ができると、飲食に不便を感じるなど日常生活に支障をきたす。
原因が特定できれば、その原因を取り除くことで症状が落ち着くことも多い。
一方で、原因不明の口内炎もかなりある。
 
一番多いのは、患部が白くなる「アフタ」。
直径2~5ミリと小さいが、ものが当たると強く痛む。
原因はアレルギーや自己免疫異常による病気、ビタミン不足、ストレスなど様々だ。
予防法はなく、軟こうや貼り薬、噴霧薬を便って治療する。
通常は10日前後で治るが、慢性再発性アフタになると繰り返し、漢方薬を用いることもある。
 
歯のとがった角や義歯などが触れたり、熱いものの刺激を受けたりして、潰瘍ができることもある。
痛みは強いが、接触や刺激がなくなると1週間ほどで治る。
 
単純庖疹ウイルスや帯状庖疹ウイルスが原因の水ぶくれもある。
水ぶくれが破れると強く痛む。
小児に多いのは手足口病などによる口内炎だ。
 
頻度は少ないが、免疫が自分自身を攻撃する「自己免疫疾患」の天疱瘡や類天疱瘡で水ぶくれができることもある。
この場合、水ぶくれはすぐに破れて、痛みを生じる。
疑いがある場合は皮膚科を受診するとよい。
 
白い斑点状でこすると取れるなら、カンジダ症だ。
高齢者やがんの化学療法を受けている人、ステロイドを服用中
の人に多い。
主に抗真菌薬で治療する。
 
赤くただれたり、白色線状が混じったりする場合は、偏平苔癬が考えられる。
金属や薬剤などのアレルギーの影響であれば、除去すると症状が
落ち着くことがある。
一方で原因が分からず難治性のことも。
症状が強い時は、軟こうを使う。
 
原因不明の口内炎は、口の中を清潔に保ち、軟こう等で痛みを和らげて、患部をカバーして対応する。
なかなか治らない時は、腫瘍の可能性もあるので注意が必要。
歯科や歯科口腔外科、耳鼻咽喉科を受診したい。
 
執筆 
国立病院機構東京医療センター歯科口腔外科医長・大鶴 洋先生
参考・一部引用
日経新聞・朝刊 2018.8.25

お笑いによる免疫力や痛みの改善

お笑いで免疫力や痛みが改善

大阪市は喫煙率が高く、検診受診率は低いという問題を抱えている。
実際、肺がんの死亡率は男性で全国平均の1.3倍、女性では1.4倍だ。
肝臓がんも男女とも全国平均の1.5倍にのぼるなど、「あきまへん」状態が続いてきた。

私的コメント
大阪市の特殊性が浮き彫りになっています。

そんな大阪のがん対策の要が、昨年春から場所も名称も一新した「大阪国際がんセンター(旧大阪府立成人病センター)」だ。
同センターでは、最先端のがん治療を行う傍ら、大阪らしい取り組みも進めている。
 
センターの研究グループはがんの患者に「お笑い」を見てもらうことで、免疫力や症状などに改善がみられたとして、5月末に記者会見を開いて成果を発表した。
 
センターで治療を受ける40歳以上65歳未満のがん患者57人が研究に参加した。
吉本興業などの協力で、桂文枝さんやオール阪神・巨人さんらの落語や漫才を隔週で計4回見た患者のグループ(27人)と、見なかった患者のグループ(30人)で、免疫の働きや精神状態、症状などに違いがあるかを調べた。

私的コメント
2つのグループをどのように分けたかが書かれていません。
希望者で分けたとすれば、普段から「お笑い」が好きな人ということになってしまいます。

その結果、お笑いを見なかったグループは、がんを攻撃する役割を持つ免疫細胞「ナチュラルキラー(NK)細胞」の割合に変化はなかったが、お笑いを見たグループでは1.3倍に増えた人がいるなど、NK細胞の割合が増える傾向が確認された。
さらにお笑いを見たグループでは、免疫を高めるサイトカインという物質が平均でおよそ30%増えていた。
 
緊張、抑うつ、怒り、混乱、疲労、活気など精神面でも改善がみられた。
さらにがんの痛みが軽くなり、認知機能の改善もみられたという。
緩和ケアの観点でも非常に意義のある結果だと思われる。
 
別の研究で、大阪ミナミの演劇場で漫才や新喜劇を見た後はNK細胞の働きが高まったというデータもある。
国立がん研究センターの最近の研究でも、長期にわたるストレスで発がんリスクが高まることが示されているから、がん予防の点でも笑いは重要だといえるだろう。
 
まさしく「笑う門には福来たる」だ。

執筆
東京大学病院・中川恵一准教授

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2018.8.15

大股速歩で手軽に筋力アップ

大股速歩で手軽に筋力アップ 歩幅目安は65センチ

正しい姿勢もポイント シニアでも、自分のペースで
大股でふだんより速く足を動かす「速歩」は通勤、買い物や散歩などの際に手軽にできる健康法だ。
「マラソンやジョギングは体力的に自信がない」「運動する時間がない」という人も無理せず自分のペースでできる。
シニアには足腰の筋肉を維持・強化するだけではなく、最近では認知症の予防にも効果がみられることが研究調査で明らかになってきた。
 
速歩で重要なのは歩調(テンポ)をあげることでなく歩幅を広くすることだ。
歩き方の工夫で、多くの人がすぐに始められる。
 
目標の歩幅は65センチ。
中高年になると筋肉の衰えに加えて脳機能が歩幅の広さに影響するという。
横断歩道の白線をまたぐようなイメージで歩くのが理想。
 
体格や運動能力などの点で白線を越えるのが難しいと感じる人は、白線は一つの目安と考えればいい。
 
ポイントとなるのは姿勢だ。
(1)肘は自然に曲げて、腕を後ろに大きく、前は小さく振る
(2)膝を伸ばしてかかとから着地する
(3)おしりの筋肉を持ち上げて背筋を伸ばす
歩幅と姿勢がきちんとそろえば速度は自然に速くなる。
普通のウオーキングに比べて足腰の筋肉が鍛えられる。
 
さらに視線はなるべく前に保ち、へその下に力を入れる。
手をあてて筋肉が硬くなっていればきれいな歩き方になっているという。
 
反対に、悪い歩き方は猫背で視線を下に落とすトボトボ歩き。
ビジネス街でよく見かける帰宅途中の疲れた会社員の姿だ。

時計の輸入・製造卸のインテック(東京・台東)は歩幅がチェックできる機能を備えた電波腕時計を2017年10月に発売した。
年齢・性別、体重などを入力すると目標歩幅を設定。
自動で歩幅を計測して、目標より広ければ「ヤッター」、狭ければ「ガンバロー」など4段階で液晶表示する。
価格は7000円(税抜き)。
 
1年前から商品モニターとして毎日使っている都内の会社役員、Kさん(50歳、男性)は「続けていたら、足がよく動くようになってきた」と話す。
 
旅行大手のクラブツーリズム(東京・新宿)はシニアに健康習慣を身につけてもらうツアーを長野県茅野市で5月と6月に計3回実施した。
主に70歳代が、速歩のメニューに取り組んだ。
 
ツアーに参加した東京都八王子市のKさん(76歳、女性)は「買い物やコーラスの練習で出かける時に歩幅を意識して歩く習慣がつきました。無理せず自然にできるので私たちのような年代には向いてますね」と話す。
時間がある時は普段使っているバス停の1つ手前で降りて自宅に速歩で戻るようになったという。
 
クラブツーリズムは9月以降も70歳以上を対象にツアーを実施する。
 
運動が苦手な人でもお金をかけずマイペースで継続できる速歩。
足腰の衰えを予防し、健康寿命を延ばすため、明日から試してみてはいかがだろうか。

  ◇  ◇  ◇

脳に刺激、認知症予防にも
歩幅の狭い人は脳の認知機能が低下するリスクが高い。
東京都健康長寿医療センターが高齢者666人を対象に歩行状態を4年間かけて追跡調査を実施。
歩幅を「広い」「普通」「狭い」の3グループに分けて調べたところ、「狭い」グループは「広い」に比べて認知機能が低下するリスクが3.39倍も高いことがわかった。
 
一方、歩くテンポは、「低い」(遅い)は「高い」(速い)に比べて1.01倍と、低下リスクにほとんど差がなかった。
 
通常の加齢変化よりも早く歩行機能の衰える人がいて、それが歩幅に現れる。
歩幅の狭さは認知症のリスクが高まっているシグナルだ。
歩幅が狭くなるのは筋肉量の減少に加えて、足を前に出そうとする脳からの指示がうまく伝わらないため。普段から意識して歩幅を広くし、脳への刺激を与えることは認知症予防に役立つ。

大股速歩で手軽に筋力アップ

大股速歩で手軽に筋力アップ 歩幅目安は65センチ

正しい姿勢もポイント シニアでも、自分のペースで
大股でふだんより速く足を動かす「速歩」は通勤、買い物や散歩などの際に手軽にできる健康法だ。
「マラソンやジョギングは体力的に自信がない」「運動する時間がない」という人も無理せず自分のペースでできる。
シニアには足腰の筋肉を維持・強化するだけではなく、最近では認知症の予防にも効果がみられることが研究調査で明らかになってきた。
 
速歩で重要なのは歩調(テンポ)をあげることでなく歩幅を広くすることだ。
歩き方の工夫で、多くの人がすぐに始められる。
 
目標の歩幅は65センチ。
中高年になると筋肉の衰えに加えて脳機能が歩幅の広さに影響するという。
横断歩道の白線をまたぐようなイメージで歩くのが理想。
 
体格や運動能力などの点で白線を越えるのが難しいと感じる人は、白線は一つの目安と考えればいい。
 
ポイントとなるのは姿勢だ。
(1)肘は自然に曲げて、腕を後ろに大きく、前は小さく振る
(2)膝を伸ばしてかかとから着地する
(3)おしりの筋肉を持ち上げて背筋を伸ばす
歩幅と姿勢がきちんとそろえば速度は自然に速くなる。
普通のウオーキングに比べて足腰の筋肉が鍛えられる。
 
さらに視線はなるべく前に保ち、へその下に力を入れる。
手をあてて筋肉が硬くなっていればきれいな歩き方になっているという。
 
反対に、悪い歩き方は猫背で視線を下に落とすトボトボ歩き。
ビジネス街でよく見かける帰宅途中の疲れた会社員の姿だ。

時計の輸入・製造卸のインテック(東京・台東)は歩幅がチェックできる機能を備えた電波腕時計を2017年10月に発売した。
年齢・性別、体重などを入力すると目標歩幅を設定。
自動で歩幅を計測して、目標より広ければ「ヤッター」、狭ければ「ガンバロー」など4段階で液晶表示する。
価格は7000円(税抜き)。
 
1年前から商品モニターとして毎日使っている都内の会社役員、Kさん(50歳、男性)は「続けていたら、足がよく動くようになってきた」と話す。
 
旅行大手のクラブツーリズム(東京・新宿)はシニアに健康習慣を身につけてもらうツアーを長野県茅野市で5月と6月に計3回実施した。
主に70歳代が、速歩のメニューに取り組んだ。
 
ツアーに参加した東京都八王子市のKさん(76歳、女性)は「買い物やコーラスの練習で出かける時に歩幅を意識して歩く習慣がつきました。無理せず自然にできるので私たちのような年代には向いてますね」と話す。
時間がある時は普段使っているバス停の1つ手前で降りて自宅に速歩で戻るようになったという。
 
クラブツーリズムは9月以降も70歳以上を対象にツアーを実施する。
 
運動が苦手な人でもお金をかけずマイペースで継続できる速歩。
足腰の衰えを予防し、健康寿命を延ばすため、明日から試してみてはいかがだろうか。

  ◇  ◇  ◇

脳に刺激、認知症予防にも
歩幅の狭い人は脳の認知機能が低下するリスクが高い。
東京都健康長寿医療センターが高齢者666人を対象に歩行状態を4年間かけて追跡調査を実施。
歩幅を「広い」「普通」「狭い」の3グループに分けて調べたところ、「狭い」グループは「広い」に比べて認知機能が低下するリスクが3.39倍も高いことがわかった。
 
一方、歩くテンポは、「低い」(遅い)は「高い」(速い)に比べて1.01倍と、低下リスクにほとんど差がなかった。
 
通常の加齢変化よりも早く歩行機能の衰える人がいて、それが歩幅に現れる。
歩幅の狭さは認知症のリスクが高まっているシグナルだ。
歩幅が狭くなるのは筋肉量の減少に加えて、足を前に出そうとする脳からの指示がうまく伝わらないため。普段から意識して歩幅を広くし、脳への刺激を与えることは認知症予防に役立つ。

iPSで血小板再生

iPSで血小板再生、コストなど課題

京都大学は(2018年8月)20日、江藤浩之教授らが計画するiPS細胞を用いた血小板再生医療の臨床研究について、同日午後3時の記者会見で概要を説明する。
患者自身の細胞を使うiPS再生医療は2014年の目の網膜に次いで2例目。
免疫拒絶の心配がほとんどなく患者にとって利点は大きいが、安全性やコストの問題は未解決で、今後も技術開発が必要だ。
 
今回の計画は、他人の血小板を免疫が排除してしまい治療が難しい患者を対象とする。
患者自身の細胞を使う「自家移植」なら免疫の型が患者と一致し、拒絶反応の心配がほとんどない。
胚性幹細胞(ES細胞)など他の細胞治療では難しい患者に対し、iPS細胞の強みを生かす計画となっている。
 
拒絶反応が起きるのは、他人の細胞を使う再生医療や臓器移植で共通の問題だ。そうした中でiPS細胞が登場した2007年ごろは、「免疫拒絶の心配がない移植医療の実現に道を開く」と期待が高まった。
体中の細胞に成長できるiPS細胞は、患者自身の細胞を使う再生医療の可能性を大幅に広げた。
従来、患者自身の細胞を活用できる例は皮膚や骨髄、脂肪などに限られていた。
 
iPS細胞の真骨頂と呼べる自家移植だが、血小板に次いですぐさま他の計画に波及する見通しは薄い。
個々の患者からオーダーメードで質を保証したiPS細胞を作製するのは高額で、時間もかかるためだ。
今回、血小板で自家移植を計画するのは、血小板が核を持たずがん化のリスクが極めて低いことも理由にある。
 
iPS細胞は皮膚や血液の細胞で複数の遺伝子を強制的に働かせて作製する。
この過程で遺伝子の一部に元の細胞の性質が残ったり、遺伝子の変異が入り込んだりする恐れがある。
 
理研が14年、目の難病患者を対象に実施した世界初の臨床研究は、患者自身のiPS細胞を使う自家移植だった。
1例目の移植を果たしたが、続く2例目は遺伝子変異が見つかり移植を断念、v細胞の扱いの難しさを痛感した。
患者1人につき約1億円ともいわれる費用も問題になった。
 
自家移植を予定していた脳などの臨床計画はいったん、他人の細胞を活用する方向に振れた。
あらかじめ備蓄し品質検査を済ませたiPS細胞を使えば、費用や時間をある程度短縮できる。
ただ他人の細胞を移植することで免疫拒絶の問題が再び浮上した。
ES細胞との違いが曖昧になり、利点がわかりにくくなっている。
 
免疫拒絶を逆手にとる考え方もある。
自家移植では細胞ががん化した場合に免疫反応が起きにくく「より危険」(免疫学者)なためだ。
大阪大学の他人のiPS細胞を用いた心臓再生の臨床研究では、移植後に数カ月で免疫抑制剤を切る計画。
仮に体内でがんが生じても他人の細胞なら免疫が排除しやすいとみる。
薬剤で拒絶反応を抑えられるケースでは当面、他人のiPS細胞の普及を目指すことになりそうだ。
 
iPS自家移植の普及には個々の患者から安く高品質なiPS細胞を作製するための基礎研究が必要だ。
他人の細胞であってもゲノム編集技術との組み合わせや免疫反応を抑える制御性T細胞を活用して免疫拒絶を回避するアイデアもある。
安全で効果の高い再生医療の普及には、多方面で技術開発を進めて組み合わせる必要がある。


追加
・臨床研究は、血液の成分が減る難病「再生不良性貧血」の中でも血小板が減る「血小板減少症」の患者1人が対象。
(既に候補者がおり患者募集はしない予定)
他人の血小板を輸血しても拒絶反応で消えてしまい効果のでない特殊な例だ。
 
・患者自身の細胞からiPS細胞を作り、血小板に育てて3回に分けて患者に輸血する。
2カ月ごとに投与量を増やし、1年の経過観察で安全性や有効性を確認する。

・研究チームはiPS細胞から血液成分の赤血球を作る研究も進めている。

・米国は先行したES細胞も並行して研究を進めており、日本との戦略の差が目立つ。

・今回の費用は患者自身の細胞からiPS細胞を作るため5000万円と高価。
血液製剤を補うには、コスト低減が欠かせない。
こうした課題の解決が国際競争を勝ち抜く鍵になる。
今回は血小板を1回で最大1000億個輸血する。
血小板には増殖しない性質があるためがん化リスクが低いが、品質の悪い細胞が紛れ込む可能性がある。
研究チームは移植前に放射線をあてることで取り除く方針だ。

・現在は、日本赤十字社が製造する血小板製剤が使われているが、使用期限が4日で備蓄できない。

・江藤教授の成果を生かして、スタートアップ企業のメガカリオン(京都市)もiPS細胞から作った血小板の企業主導治験を計画している。
19年にも米国で開始を目指す。
数種類の血小板で多くの患者に投与可能で、血小板不足を補う技術として実用化する。


<関連サイト>
「血小板輸血不応症を合併した再生不良性貧血」患者を対象とするiPS細胞由来血小板の自己輸血に関する臨床研究について
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/180820-170000.html



ヒト iPS 細胞から止血効果を持つ血小板の産生に成功
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400008825.pdf


<私的コメント>
実はiPS細胞から人工血小板を最初に作り出すことに成功したのは東大の中内教授です。
「お互いの競争によって」というイメージではなく山中・中内両先生のオープンマインドな研究姿勢が実を結んだ美談と考えています。
両先生は素晴らしい性格の方です。

参考
山中・中内で新会社を設立、iPS初の臨床応用目指す、人工血小板を製造
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20111020/157301/

ヒトiPS細胞由来の機能的血小板産生
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/research/papers/ips_4.php

ヒトiPS細胞で血小板 東大、世界で初めて成功
https://ameblo.jp/regenerative-kyoto/entry-10202473865.html

iPS細胞研究は日本の「アポロ計画」だ!|世界をリードする日本の再生医療
https://courrier.jp/news/archives/99565/

第20回 | フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」
https://www.terumozaidan.or.jp/labo/class/20/interview01.html

免疫療法、進む開発

治療を止めても、がんは縮み続けた 免疫療法、進む開発

がんをもったまま、それまでの暮らしを続ける人が増えてきた。
手術や抗がん剤をはじめとする医療の進歩が「共生」を可能にしつつある。
その中でいま、体を守るしくみを利用した新しい免疫療法に注目が集まる。
高額の費用や重い副作用といった課題はあるが、新しい手法の開発は続く。

物流センターをつくる埼玉県久喜市の建設現場。
Sさん(50)は1月下旬、コンクリート製の内壁を設置する作業を始めた。
手がけたものが後まで形として残る。
そこに仕事のやりがいを感じる。
 
2015年夏、肺に12センチのがんが見つかった。
リンパ節にも広がっていて抗がん剤治療を受けたがすぐ効かなくなり、脳にも転移した。
医師から「これ以上の治療は難しい」と告げられ、「このまま死ぬしかないかな」と思った。
 
だがこの1年10カ月ほど、これといった治療を受けていないのに、がんは小さくなり続けている。
 
新しい薬が使えると聞き、16年3月に千葉大病院に移りオプジーボの点滴を受けた。
肝機能が悪化し、計3回の点滴で中断したが、その後もがんは縮小し最近は3.8cmになった。
  
「がんがまた大きくなったとしても、この薬があるという安心感がある」という。
 
昨秋スペインであった国際学会で、「この薬を使った進行非小細胞肺がん患者の約1割は、3年間にわたりがんが大きくなっていない」との報告があった。
Sさんを担当する滝口裕一・千葉大教授(腫瘍内科)は「以前だったら考えられない」と驚く。
 
オプジーボは「免疫チエックポイント阻害剤」と呼ばれ、体を外敵から守る免疫に作用する。
がんは免疫細胞の攻撃力にブレーキをかける能力をもっているが、この薬はブレーキをはずして攻撃力を取り戻す。
 
皮膚がんの一種メラノーマや肺、胃がんなどの一部の治療に保険適用が認められている。
効いた人には長続きしやすく、老衰など別の原因で亡くなる人も出てきた。
ただし、効くのは患者の一部で、特有の重い副作用が起こり得る。
1人の治療に年間1700万円ほどの費用がかかるとされる。
 
がんを人生最後の病気にしない。
治療にあたるうえでの大きな目標だ。
一部の人とはいえ、それがかない始めている。


新手法進む開発 安全性などは検証されるのはこれから
こうした免疫の働きを利用する新たな治療法が今年、次々に実用化に向けて動き出す。
その一つが、体に無害な近赤外光を使う「光免疫療法」だ。
国内での治験が3月、頭頸部がんを対象に始まる。
 
特殊な薬を注射したうえで、がんに光をあてる。
がんに集まった薬と光が反応してがんが壊れる。
免疫の力も活性化されて残ったがん細胞をたたく。
先行する米国の治験では、15人中7人でがんが消えたという。
 
手法を開発した米国立保健研究所(NIH)の小林久隆・主任研究員は「今後は免疫力をさらに高める方法を併用して、大腸がんなど、より幅広いがん安全性など検証これからを治せるようにしたい」とする。
 
もう一つの代表的な治療法が、患者の体から取り出した免疫細胞に遺伝子操作をして攻撃力を高めて戻す「CAR-T(カーティー)細胞療法」。
血液がんを対象に開発が進み、国内では自治医大などが臨床研究を進め、新たに名古屋大なども準備をしている。
米国での承認につながった治験では急性リンパ性白血病患者63人中52人で、がんが検出されなくなったという。
一度の点滴ですみ、効果は高いとされるが、過剰な免疫反応が起きるなど激しい副作用が起こることがある。
治療費は高額で米国では5千万円超もする。

これまで、免疫療法といえばリンパ球の活性化法やがんワクチンが主で、今も多くの施設で実施されている。
ただしきちんと効果が確認されたものはほとんどなく、自由診療で高額な費用を請求する施設もある。
 
「従来の免疫療法は、有効性を検証するための臨床試験として実施されるべきだ。そうせずに高額の費用を患者からとるのは問題だ」という専門家もいる。
  
「免疫療法」にはいろいろな種類があり、実力がわかっていないものも多い。
期待される効果と安全性が本当にあるのか、検証されるのはこれからだ。


減る死亡率 残る課題 喫煙・低い受診率・高額な費用・・・
がんで亡くなる人は年間約37万人。
新たにかかる罹患者も増え続けている。
ただ、人口の高齢化などを考慮して、国のがん対策が指標としている年齢調整死亡率(75歳未満)は、50年前と比べ約40%減った。
 
要因はいろいろと考えられている。
 
胃がんの原因となるピロリ菌や肝臓がんにつながる肝炎ウイルスヘの感染者が少なくなり、がんになる人が減った。
1983年からは法律に基づくがん検診が胃と子宮を対象に始まり、早い段階でがんを見つけて治療することで、死亡を避けられるようになった。
 
CTやMRIといった診断機器が発展し、がんがどこにあるかを正確に見分けられるようになった。
これに伴い、手術では最小限の範囲でがんを確実に切除できるようになった。
ロボットの活用を含めた内視鏡手術は、精密で体にやさしい治療を可能にした。
がんだけを狙って攻撃する放射線治療も普及が進んだ。

グリベックやハーセプチンといった、がん細胞を狙い撃ちにする分子標的薬も次々に登場し、複数の薬を組み合わせる手法が広まった。
胃や肺といったがんのできた部位ごとにではなく、がん細胞の遺伝子タイプに応じて薬を選ぶ取り組みも本格化し始めている。
  
がんは全体として以前よりも治るようになり、がんとともに生きていく人が増えた。
それだけ、就労面などの社会の整備がより重要になっている。

課題も多い。
特定の薬が効くとみられる患者を事前に見分ける方法は開発の途上で、死亡率の高い膵臓がんなどへの画期的な治療法はまだ確立していない。
がんの最大の原因といわれる喫煙への対策、受動喫煙対策は世界的にも遅れている。
大腸がんなど効果が見込めるがんについての検診受診率も高いとはいえない。        

「効果的な新薬の多くは高額で、長く使い続けるほど医療費は増す。とくに超高齢の人への検診や治療は本人への負担がかかる上に効果が必ずしもはっきりしない。どんな人にどこまでの医療が提供されるべきなのか、検討を急ぐべきだ」と、ある専門家は指摘する。
 
参考・引用一部改変
朝日新聞 2018.2.4

わずかな知識で運命分かれる がん

わずかな知識で運命分かれる

今や男性の3人に2人、女性の2人に1人ががんになる。

私的コメント
漠然と2人に1人と考えていましたが、男女で分けて考えると男性の場合は3人に1人しかがんにならないということになります。

特に男性は50歳を過ぎてから急激に発がんリスクが高まるから、定年を迎えてこれから人生を楽しもうという矢先に、この病気で命を落とす人が後を絶たない。
働く世代の死因の半分以上、病死に限れば9割をがんが占めている。
がんを増やす最大の原因は細胞の老化だから、定年の延長はさらにこの割合を高めるはずだ。
 
そして、がんという病気はわずかな知識があるかどうかで運命が大きく分かれてしまう病気だ。
とりわけ、自分自身の発がんリスクを知っておくことが大事だ。
 
例えば、胃がんの原因の98%程度がピロリ菌だ。
胃の中でも生きられるこの細菌は、免疫力が完成していない乳幼児期に感染し、慢性の炎症を起こすことで胃がんの原因となる。
何らかの機会に血液検査などでピロリ菌感染の有無を確かめておくとよい。
なお、除菌をしても慢性胃炎の履歴は抹消できませんから、胃がんのリスクは残るといえる。
 
肝臓がんの原因の8~9割がB型またはC型の肝炎ウイルスで、保健所に行けば無料で検査が受けられる。
子宮頸がんも、発症原因のほぼ100%が性交渉に伴うヒトパピローマウイルスの感染だ。
性経験のない女性にはほとんどリスクはないことになる。
 
乳がんの発症率を高めるのは女性ホルモンだ。
月経のある期間は乳がんのリスクが上がるから、出産経験がなく、生理が長く続く女性はリスクが高まる。こうした方は毎月の自己触診と、2年に一度のマンモグラフィーを欠かさないことが大切だ。
 
O型以外の血液型の人は膵臓がんのリスクが高まるが、血液型以上に膵臓がんの危険を高めるのが糖尿病だ。
糖尿病になると膵臓がんや肝臓がんはなんと2倍、がん全体でみて2割も増える。
糖尿病と診断されたらがん予備軍だと覚悟し、検査を心がけるべきだ。
 
喫煙や毎日3合以上の大量飲酒はがんを6割も増やす。
リスクを知るどころか、自らリスクを高めることになってしまう。

執筆
東京大学病院・中川恵一准教授

参考・一部引用
日経新聞・夕刊 2018.8.29